米国 先進炉からの電力供給でGoogleら3社協業
22 Aug 2025
米原子力新興企業のケイロス・パワー社は8月18日、米国の拡大するエネルギー需要に対応し、先進原子力分野における同国のリーダーシップを強化するため、IT大手のGoogle社および米テネシー峡谷開発公社(TVA)と新たな協力関係を発表した。ケイロス社とTVAは電力購入契約(PPA)を締結、テネシー州オークリッジに建設されるケイロス社の実証プラント「ヘルメス2」(出力5万kWe)がTVAの送電網を経由し、テネシー州とアラバマ州にあるGoogle社のデータセンターに電力を供給する。TVAは、先進的な第4世代炉からの電力を購入する米国初の電力会社となる。
Google社は2024年10月、自社のデータセンターへの電力供給を目的にケイロス社と2035年までにケイロス社が開発する先進炉のフッ化物塩冷却高温炉を複数基、合計出力にして最大50万kWeの導入による電力購入契約(PPA)を締結。ヘルメス2は、Google社との同契約の下で最初に建設される発電所となる。ケイロス社はGoogle社のテネシー州モンゴメリー郡ならびにアラバマ州ジャクソン郡にあるデータセンターへの電力供給を加速するために、ヘルメス2の出力を2.8万kWから5万kWeに増強し、1基の原子炉で発電を行う予定で、2030年の運転開始を見込んでいる。Google社は事業の脱炭素化をさらに推進していく考えだ。
ヘルメス2は、テネシー大学や他の地元大学と提携して開発された新しいプログラムを通じて、発電所のオペレーターやエンジニアとして高収入の仕事に就く地元の労働力の人材を育成するなど、オークリッジを原子力イノベーションのハブとして再確立するものと期待されている。
TVAのD. モールCEOは、「エネルギー安全保障は国家安全保障そのものであり、電力はAIや国家の経済的繁栄を支える戦略的な基盤。世界は米国のリーダーシップを求めており、この画期的な合意は新しいビジネス手法の始まりだ。技術、サプライチェーン、提供モデルを開発して産業を育成し、米国のエネルギーを解き放つことで、Google社のような企業を惹きつけ、支援し、AI競争に勝つことができる」と述べた。
3社は、産業用エネルギー利用者に対して革新的なソリューションを提供すると同時に、地域経済の成長と雇用創出の促進を目指している。ヘルメス2の開発・運転で得られる教訓は、後続機の導入が進むにつれてコストの削減に貢献し、TVA管轄エリアやその他の地域におけるクリーンで安定した発電の経済性を改善すると期待を寄せている。
ヘルメスは2023年12月に、米原子力規制委員会(NRC)が半世紀ぶりに建設を許可した非水冷却炉(非発電炉、熱出力3.5万kW)。TRISO(3重被覆層・燃料粒子)燃料と熔融フッ化物塩冷却材を組み合わせ、原子炉の設計を簡素化しているのが特徴で、2027年に運開予定。すでに2024年7月に土木工事(掘削工事)に着手している。2020年12月に米エネルギー省による「先進的原子炉実証プログラム(ARDP)」の支援対象炉に選定された。ヘルメス2は同炉を2基備えた発電プラントで、建設許可が2024年11月に発給されている。ケイロス社はこれらのヘルメス・シリーズで得られる運転データやノウハウを活用して、技術面、許認可面および建設面のリスクを軽減、コストを確実化して、2030年代初頭に商業規模のフッ化物塩冷却高温炉「KP-FHR」(熱出力32万kW、電気出力14万kW)の完成を目指している。