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英国 SMRコンペでロールス・ロイスを選定

11 Jun 2025

桜井久子

© UK Government

英政府は610日、同国初となる小型モジュール炉(SMR)の建設に向けたコンペにより、ロールス・ロイスSMR社を支援対象に選定した。政府の最終承認後、今年後半にも政府機関のグレート・ブリティッシュ・エナジー・ニュークリア(旧グレート・ブリティッシュ・ニュークリア:GBN)がロールス・ロイスSMR社と契約を締結、共同開発会社を設立し、建設サイトを割り当てる予定。

GBN
20237月、英国で建設するSMRを選定するコンペを開始。約2年間にわたって審査を続けてきた。選定されたロールス・ロイスSMR社が、国内に3基を建設する。20252月、GBNから最終入札への招請の段階で最終選考に残っていたのは、米GE日立・ニュクリアエナジー・インターナショナル社、米ホルテック・インターナショナル社英法人、英ロールス・ロイスSMR社、米ウェスチングハウス(WE)社英法人の4社であった。

国際エネルギー機関(IEA)によれば、世界の発電量は2050年までに倍増。中でもSMR市場は、2050年までにおよそ5,000億ポンド(約97.7兆円)規模に成長する見込みである。英政府は、今回の選定を受け、英国が新しい原子力技術の国際競争でリードするための重要な一歩であると指摘、同プロジェクトは自国をクリーンエネルギー大国に変革する「変革の計画(Plan for Change)」の一環と位置づけている。また、国内のサプライチェーンより7割を調達するだけでなく、建設のピーク時に最大3,000人の高レベルの雇用創出と約300万世帯分の電力供給が可能になるとし、地域経済とエネルギー安全保障を強化するものと強調している。

なお英政府は、20304月までの歳出見直し(Spending Review)期間中に総額25億ポンド(約4,884億円)以上をSMRプログラムに計上予定であり、2030年代半ばの送電開始を目指している。SMRを含む新規建設を容易にするため、計画規則(Planning Rules)を改正する方針も発表されている。従来の原子炉よりも小型かつ短期間で建設可能で、後続機ほどコストが低減されるため、SMRへの期待は大きい。英国の原子力発電電力量は、2030年代にSMR、サイズウェルC、ヒンクリー・ポイントCが運転開始することで、過去半世紀を上回ると見込まれている。

ロールス・ロイスSMRは既存のPWRをベースとしており、電気出力が47kWSMRにしては大型なのが特徴。運転期間は60年以上。同SMRは、英国の規制評価プロセスにおいて、競合他社より18か月進んでいるという。

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