インドネシア初の原子力発電所 サイト調査を規制当局が承認
18 Aug 2025
インドネシアのPT Thorcon Power Indonesia(PT TPI)社は8月7日、インドネシアの原子力規制当局のBAPETENが、PT TPI社によるインドネシア初の原子力発電所の建設に向けたサイト評価プログラム(PET)ならびにサイト評価管理システム(SMET)を承認したことを明らかにした。
シンガポールを拠点とするThorcon International社の子会社であるPT TPI社は今年2月、米国のデベロッパーThorcon社製の先進的熔融塩炉を採用した実証プラント「Thorcon 500」(50万kWe)の建設に向けて、BAPETENに対し、PETおよびSMETの承認を得るための申請書類を提出。安全性、生態学的、サイト適合性の観点に焦点を当てた、予備的サイト調査の結果、同国バンカ・ブリトゥン州のバンカ島の沖合にある、ケラサ島を同プラントの建設サイトとして提案している。
PT TPIが提案する「Thorcon 500」は、1960年代に米エネルギー省オークリッジ国立研究所で開発された熔融塩炉(MSR)をベースとしている。低濃縮ウランを燃料とする25万kWe×2基がそれぞれ交換可能かつ密封された「Can(缶)」ユニットに格納されている。「Can」は造船所で船体に組み入れられ、浅瀬のサイトまで曳航される。各発電モジュールでは、常時1基のみが稼働し、運転8年後には、使用済みの原子炉モジュールを切り離して新規モジュールに交換。取り外したモジュールはCan交換のためにメンテナンスセンターに曳航される。
Thorcon International社は、東南アジアは世界で最も急速にエネルギー市場が成長しており、信頼性が高く手頃な価格でクリーンな電力は、経済拡大、工業化、長期的に持続可能な開発を支援するために不可欠と指摘。特にインドネシアには原子力発電導入の大きな可能性があると考え、PT TPI社はインドネシア国内に原子力エンジニアリングとライセンスチームを設立した唯一の原子力企業となった。次のステップとして、サイトライセンスおよび設計承認を取得し、2027年に建設開始、2031年のフル稼働を目指している。
PT TPI社のD. アシャリCOOは、「原子力発電が最も安全な発電形態の1つであることは現在広く理解されているが、地域社会が当社の開発するプラント固有の設計による安全性を理解できるよう、サイトライセンスと設計承認に向けて地元コミュニティや知事と緊密に連携していく」と述べた。
インドネシアは発電設備容量の半分以上を石炭火力に依存しており、インドネシア政府は今年5月、2040年までに1,000万kWeの原子力導入目標を掲げた。PT TPI社は同社の開発するプラント導入により、インドネシアの石炭依存の低減に貢献したいとしている。