米TVA 核融合発電所の導入も視野に
01 Oct 2025
米テネシー川流域開発公社(TVA)は9月19日、テネシー州オークリッジ近郊にあるTVAの旧ブルラン火力発電所サイトにおいて、タイプ・ワン・エナジー(Type One Energy)社が開発する米国初の商業用ステラレータ核融合発電所である「Infinity Two」の建設支援に向け、同社と基本合意書(LOI)を締結した。
タイプ・ワン・エナジー社は2019年設立のベンチャー企業。先進的な製造技術や最新の計算物理学、高磁場超伝導マグネットを組み合わせ、Infinity Two(35万kWe)を開発中で、早ければ2030年代中頃の稼働を目指している。同社は、複雑にねじれたコイルで強力な磁場を発生させ、ドーナツ状のプラズマを安定して閉じ込める、ステラレータ型核融合技術を採用。TVAによると、ステラレータは現在唯一、安定した定常運転と高効率を実証しており、競争力のある電力供給に資する可能性があるという。今回のLOIでは、Infinity Twoの運転・保守要員の研修施設として、旧ブルラン火力発電所サイトに建設される、プロトタイプ「Infinity One」を活用する可能性を指摘している。
Infinity Oneは、後続の核融合パイロットプラントの設計と運用効率、信頼性、保全性、手頃な価格といった重要な側面をテストし、長期的な国家核融合研究施設の優れたプラットフォームにもなると期待されている。タイプ・ワン・エナジー社は今年2月、TVAとInfinity Twoプラントの計画を共同開発することで合意、7月には最初の商業契約を締結し、TVAはアラバマ州にある同社施設などを通じ、Infinity One向けに特化した溶接・製造技術の開発を支援する。Infinity One向けに開発された製造・建設手法は、Infinity Twoの建設に活用する方針である。
TVAのD. モールCEOは、「当社は、米国の経済繁栄を支え、AI・量子コンピューティング・先端製造業を後押しする先進原子力導入のリーダー。タイプ・ワン・エナジー社との戦略的パートナーシップは、テネシー州のB. リー知事が同州を安全かつクリーンで信頼性の高いエネルギーのリーダーと位置づけ、経済成長と雇用機会をもたらす原子力エコシステムの構築にどのように貢献しているかを示すものだ」と強調した。
ブルラン火力発電所は56年間の運転を経て、2023年に閉鎖。石炭依存を減らし、クリーンエネルギーに注力するというTVAの公約の一環である。タイプ・ワン・エナジー社は、リー知事自身が提案し、州政府が2023年に創設した「原子力基金」から資金提供を受けた初の企業でもある。同基金には5,000万ドル(約74億円)が投じられ、原子力関連企業の誘致や教育研究の強化に充てられている。
同社のC. モウリーCEOは、「世界のエネルギー課題解決には、先見性あるパートナーとの大胆なコラボレーションが必要。リー知事やTVAと協力して、テネシー州を核融合の全国的なハブにしていく」と意気込みを語った。
Infinity Twoの導入に必要な資金調達や建設、電力購入契約に関する最終決定や正式契約は、TVA理事会の承認や規制当局の審査、TVAの最低コスト計画および米国のエネルギー戦略との整合性が条件となる。