原子力産業新聞

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米TVA ニュースケール社製SMRも導入へ

09 Sep 2025

桜井久子

ENTRA1プラント完成予想図 Ⓒ TVA

米テネシー峡谷開発公社(TVA)とENTRA1エナジー(ENTRA1)社は92日、TVAが供給する米国南東部の7州において、ニュースケール社製の小型モジュール炉(SMR)を搭載した6プラント、最大で計600kWeの展開で協力する合意書を締結した。ENTRA1社が電力インフラを開発・所有し、将来的にはTVAに電力を販売する計画。

今回の提携により、約450万世帯または60の新しいデータセンターに相当する十分なカーボンフリーのベースロード電力供給が期待されており、両社はハイパースケールデータセンター、人工知能(AI)、半導体製造、その他のエネルギー集約的な産業部門など、莫大な電力需要に応えると強調。両社はこの計画を米政権のエネルギードミナンス(支配)戦略とエネルギー安全保障の確保の重点方針に従うものと位置づける。

ENTRA1社は、米国の原子力、特にSMRと天然ガス火力発電部門に、最高水準の米国技術導入を目指す電力会社。世界的な重要インフラプロジェクトへの投資、開発、実行における豊富な経験を活かし、電力購入契約(PPA)に基づく、電力の販売に注力している。ENTRA1社はニュースケール社製のSMR「ニュースケール・パワー・モジュール(NPM)」の商業化、流通、展開に対する世界的な独占的権利を保有する戦略的パートナーであり、同SMRを搭載したENTRA1プラントの開発、資金調達、投資、運転、管理までワンストップサービスを担うと強調する。

TVAのD. モールCEOは、「ENTRA1社との契約は、エネルギー安全保障を確保し、全米に雇用と投資を創出するために不可欠な次世代原子力の推進において、官民パートナーシップが果たす重要な役割を浮き彫りにしている」と指摘。ENTRA1社のS. アルバラド最高プロジェクト責任者は、「エネルギー安全保障は国家安全保障であり、信頼できる電力はアメリカの未来の生命線。AIデータセンター、高度な製造業を強化し、国力を強く保つ重要な産業を促進。豊富で手頃な価格のベースロード電力がなければ、イノベーションは失速し、サプライチェーンは寸断される」と語った

ニュースケール社のSMRNPM」はモジュール統合型のPWR1基あたり7.7kWの電力、25kWの熱を生成するNPMを最大12基連結。顧客のニーズに合わせて柔軟に拡張可能である。発電、地域暖房、海水淡水化、商業規模の水素製造、プロセス熱として供給し、世界中の多様な顧客にサービスを提供する体制を整えているという。今年5月、米原子力規制委員会(NRC)から、NPM7.7kWe)の標準設計承認(SDA)を取得。商業用途としてNRCの設計認証を受けた初のSMRである。

TVAは、ENTRA1社のような新興企業と戦略的に提携し、手頃な価格で豊富なエネルギー供給可能な新しい原子力技術の開発を進めている。同社は今年5月、NRCに対し、テネシー州オークリッジ近郊の同社のクリンチリバー・サイトにおいて、GEベルノバ日立ニュークリアエナジー(GVH)社製SMRBWRX-300」(30kWe)の建設許可を申請。さらに8月には、米原子力新興企業のケイロス・パワー社と、ケイロス社がオークリッジで建設を計画するフッ化物塩冷却高温炉の実証プラント「ヘルメス2」から最大5kWePPA締結。TVAの送電網を経由し、テネシー州とアラバマ州にあるGoogle社のデータセンターに電力を供給する計画だ。

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