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米テラパワー カンザス州でNatrium建設を検討へ

07 Oct 2025

桜井久子

Ⓒ TerraPower

米国の原子力開発ベンチャー企業のテラパワー社は923日、米国中西部のミズーリ州カンザスシティを拠点とする電力会社エバジー(Evergy)社ならびにカンザス州商務省と覚書(MOU)を締結した。テラパワー社が開発するナトリウム冷却高速炉「Natrium」(34.5kWe)と付随するエネルギー貯蔵システムをカンザス州におけるエバジー社の供給区域内に建設を検討する。

MOU締結により、先進的な原子力発電所のサイト固有の特性を共同で評価するほか、Natrium炉の技術設計およびエバジー社の顧客に向けたサービス能力を調査する。サイト選定は、地域社会の支援、サイトの物理的特性や米原子力規制委員会からの許認可取得可能性、既存インフラへのアクセスなどの要素を評価した上で実施される。

カンザス州のL. ケリー知事は、「カンザス州の市民と企業のエネルギー需要を満たすにあたり、常にあらゆる手段を講じる方針を支持してきた。州の未来を支える、利用可能なあらゆるエネルギー源を探求する必要があるため、革新的な手法の活用を歓迎する」と述べ、D. トーランド州副知事兼商務長官も、「カンザス州の驚異的な経済成長を継続するためには、競争力を強化しながら消費者のコストを抑制する、あらゆる革新的な選択肢を検討する必要がある。このプロジェクトは両方を実現し得るものだ」と語った。

エバジー社のD. カンプベルCEOは、「原子力発電は何十年にもわたって当社の発電ミックスを構成している。信頼性が高く、無炭素電源の原子炉をカンザス州に追加導入するにあたり、そのコスト、技術、実現可能性を評価していく」と述べた。エバジー社はカンザス州とミズーリ州に電力を供給しており、発電電力量の約半分を炭素排出ゼロの電源から供給。カンザス電力共同組合と共同所有するウルフ・クリーク原子力発電所(PWR128.5kWe)は1985年に運転を開始し、カンザス州の発電電力量の約20%を占めている。

Natrium炉は、熔融塩ベースのエネルギー貯蔵システムを備えており、貯蔵技術は必要に応じてシステムの出力を50万kWeに増強し、5時間半以上維持することができる。これにより、Natrium炉は再生可能エネルギーとシームレスに統合され、費用対効果の高い電力網の脱炭素化を実現すると言われている。ワイオミング州ケンメラーにおける建設に向けて、現在、米原子力規制委員会は建設許可申請の審査を加速して実施中。テラパワー社はNatrium炉の送電開始を2030年と見込んでいる。

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