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インド マヒ・バンスワラ発電所建設プロジェクトが始動

15 Oct 2025

桜井久子

式典の模様  Ⓒ Prime Minister’s Office

インドのN. モディ首相は9月25日、ラジャスタン州のバンスワラで、アヌシャクティ・ヴィデュット・ニガム(Anushakti Vidhyut Nigam Ltd = ASHVINI)社のマヒ・バンスワラ原子力発電所建設プロジェクトの定礎式のほか、太陽光発電、送電プロジェクトなどを含む、総額1兆2210億インドルピー(約2.1兆円)以上のインフラ開発プロジェクトの開始を記念する式典を開催した。

ASHVINIは、原子力発電所を所有・運転するインド原子力発電公社(NPCIL)とインド国営火力発電会社(NTPC)による合弁会社(NPCIL: 51%、NTPC: 49%)。両社の財務、技術、プロジェクトの専門知識を統合し、原子力発電所を建設、所有、運転することを目的に設立され、20249月に政府が承認。政府はPHWR技術に基づくマヒ・バンスワラ建設プロジェクトの実施権を、NPCILからASHVINIへの移転することも承認した。20255月には、原子力規制委員会(AERB)から同発電所のサイト許可が発給されている。ASHVINI社は今後、国内の様々な地域で他の原子力プロジェクトも推進していくとしている。

マヒ・バンスワラ発電所建設プロジェクトは、雇用と投資の機会を提供し、ラジャスタン州内の電力不足を緩和し、地域を活性化することを目的としている。同プロジェクトには約4,200億インドルピー(約7,140億円)が投資され、国内最大級の原子力発電所の1つとなる。同発電所は、原子力発電所を所有・運転するインド原子力発電公社(NPCIL)が設計・開発した70万kWe級加圧重水炉(PHWR)4基で構成。いずれも20312032年にかけて稼働させる予定である。サイト面積は約600 ha、マヒ川から冷却水を取水する。ラジャスタン州では、すでにラジャスタン原子力発電所でPHWR×7基(計188kWe)が運転中で、1基(PHWR70kWe)が建設中である。

マヒ・バンスワラ建設プロジェクトは、インド全土に70kWePHWR10基建設する計画の一環。マヒ・バンスワラのほか、カイガ5-6号機(カルナータカ州)、ゴラクプール3-4号機(ハリヤナ州)、チャッカ1-2号機(マディヤ・プラデシュ州)が計画されている。これらシリーズ建設により、コスト効率の向上、迅速な導入、運用ノウハウの習得を目指している。

現在のインド国内の原子力発電設備容量は、25基の計888kWe。総発電電力量に原子力が占める割合はわずか3.3%である。政府は戦略的な政策介入とインフラ投資を実施、特に国産原子力技術の開発・導入と官民連携に重点を置き、2047年までに原子力発電設備容量を1kWeに拡大、2070年までに排出量ネットゼロの達成を目指している。

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