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スロベニア政府、2基目の原子炉建設について遅くとも2027年までに決定へ

27 May 2020

クルスコ発電所を視察するヴルトヴェツ大臣(=手前) ©スロベニア電力

国内唯一のクルスコ原子力発電所(72.7万kWのPWR)で総発電量の三分の一以上を賄うスロベニアで政府はこのほど、遅くとも2027年までに同発電所で2基目の原子炉を建設するかについて最終的な判断を下すと表明した。同国政府が100%保有する有限責任企業のSTA通信社が、インフラ省J. ヴルトヴェツ大臣の発言として5月22日付けで明らかにしたもので、決定に際しては専門家による経済性等の分析の実施が不可欠だと伝えている。

隣国クロアチアとともにクルスコ発電所を共同所有する国営スロベニア電力(GEN Energiya)によると、ヴルトヴェツ大臣の一行はこの日に同電力の本社とクルスコ発電所を視察しており、クルスコ発電所が供給する信頼性の高い電力の重要性に言及。大臣は「スロベニアは現在だけでなく将来も原子力オプションを堅持する」と明言しており、同発電所が安全で環境への影響も少ないエネルギーを供給している事実を強調した。

同大臣の認識では、原子力オプションの堅持というインフラ省の基本指針は、国内のすべての原子力関係施設における安全かつ優秀な運転実績に基づくもの。クルスコ発電所近郊のヴルビナでは、低中レベル放射性廃棄物貯蔵施設の建設を出来る限り早急に始める必要があるが、環境上の合意取得や国境近辺の環境影響声明書手続きなどで着工は遅れている。政府は関係するすべてのインフラ・プロジェクトについて、これ以上無意味に作業を遅らせることはできず、そのための法改正手続きも進めていることを明らかにしている。

今回訪問を受けたスロベニア電力は、原子力産業について「実証済みの高い付加価値がついた先進産業であり国家経済に対するマクロ経済的効果は甚大だ」とコメント。発展の推進力とも言えることから、関係するエネルギー・プロジェクトの成功に向けて一層調和の取れた重要な対策を講じていくとした。

クルスコ発電所の幹部は、低中レベル廃棄物の永久貯蔵施設建設を最優先事項の一つに掲げ、「この発電所を長期的に運転できるか否かはこのプロジェクトにかかっている」と説明。計画に沿って発電所の安全性改善作業を効率的に進める上で、個別省庁の取組みだけではなくスロベニア政府としての支援が必要になると訴えている。

(参照資料:STA通信社(英語)スロベニア電力(スロベニア語)クルスコ原子力発電所(スロベニア語)の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの5月26日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)

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