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WNA 世界の原子力発電開発の長期見通しを発表

03 Feb 2026

桜井久子

© WNA

世界原子力協会(WNA)は120日、初の「世界原子力発電見通し」(World Nuclear Outlook Report)を発表した。各国政府が定めた目標を詳細に分析するとともに、世界の原子力開発に関する包括的な情報をとりまとめた。WNAは、各国政府が自らの公約を達成するために迅速かつ持続的な行動をとることを条件に、2050年までに世界の原子力発電設備容量の三倍化が可能であると結論している。

WNAによると、各国政府の目標が達成されれば、世界の原子力発電設備容量は2050年までに14.46kWe(グロス)に達し、2023年にUAE・ドバイで開催された国連気候変動枠組条約第28回締約国会議(COP28)以降、30か国以上が支持した原子力の三倍化宣言で設定された約12kWeの目標を上回る可能性があると予測。これには、各国による既存炉の運転期間延長、建設中の原子炉の完成、計画および提案されたプロジェクトの実現が織り込まれている。目標値を上回る設備容量の拡大は、気候・エネルギー安全保障戦略の中核として原子力に対する国際的な支持が高いことの表れであるとしている。

本見通しで示された主な調査結果や提言は以下のとおり。

○世界の原子力発電設備容量の見通し
各国政府が発表した原子力の新規建設に関する計画と目標に、既存炉の運転期間を最長80年間に延長、現在計画・提案されている原子炉の建設と組み合わせると、2050年までに14.46kWeの原子力発電設備容量が実現するとしている。なお、既存の殆どの原子炉の運継継続と建設中の原子炉の完成により、2030年までに設備容量は5.02kWeに達すると予測。計画中のプロジェクトが2035年までの容量拡大を牽引し、提案中・潜在的・政府主導の計画が2035年以降の容量増加を占める。

WNAは、2050年に原子力発電設備容量を稼働させる計画がある50か国を特定している。2050年までに予測される原子力発電設備容量のうち、中国、フランス、インド、ロシア、米国の5か国で約9.8kWe近くを占める見込み。新規参入国は2050年までに1.57kWeの原子力発電設備容量を目指すとしており、従来の原子力発電国以外での関心の高まりが浮き彫りになっている。また、原子炉の運転期間延長は、2050年予測の設備容量の4分の1以上に貢献する可能性がある。経年による設備利用率の低下は見られない。永久閉鎖した原子炉の平均稼働年数は増加傾向にあり、2024年には48年に達した。運転期間延長は、追加的な低炭素電力を確保する最も費用対効果の高い方法の一つである。

また、予測される2050年の設備容量の達成には、年間の追加設備容量を1,440kWe/年(2026-2030年)、2,230kWe/年(2031-2035年)、4,902kWe/年(2036-2040年)、5,160kWe/年(2041-2045年)、6,530kWe/年(2046-2050年)と引き上げていくことが必要となる。なお、2046-2050年にかけて必要となる年間6,530kWeの設備容量は、1980年代に見られた過去最高の建設ペースの約2倍である。一方で、政府目標は野心的だが願望的なものでもあり、計画中または提案中の原子炉の全てが必ずしも建設段階に進むわけではない。政府目標には、特定済みのプロジェクトによる裏付けもないものもあり、政策やその他政府措置による公約水準も国により大きく異なる。

○エネルギー需要増への対応としての原子力
2050
年までに電力・エネルギー需要に重大な影響を与える5つの主要な世界的動向として、①電力供給のない7.5億人に供給を拡大、②2050年までに98億人に達すると予測される世界人口のエネルギー需要を公平な方法で充足、③各国が化石燃料から低炭素電源へ移行する中、経済の全分野における電化を加速、④デジタルインフラやデータ集約型プロセスによる電力消費の増加、⑤代替的な低炭素熱源により、削減が困難な分野の脱炭素化、などがある。気候変動と持続可能性の整合性から、エネルギー需要の増大に応える原子力拡大の必要性は高まる一方である。

○政府、金融機関、産業界への提言

(政府向け)

  • 長期的な投資を可能にし、技術レベル、労働力、サプライチェーンを維持するための、持続可能で実行可能な原子力政策の策定および事業環境整備。
  • 技術的に可能な限り、6080年の運転期間延長プログラムを支援、早期閉鎖を回避。
  • 原子力が他の低炭素電源と同様に公平に扱われるよう電力市場を改革。
  • 許認可・立地選定・資金調達メカニズムの迅速化を支援。

(金融機関向け)

原子力およびその他の低炭素電源を同等の基準により評価、技術中立的な融資を実施し、資金調達枠組み、保証、多国間パートナーシップを通じて、新興経済国における原子力導入を支援。

(原子力産業界向け)

  • 燃料サイクルインフラを含む製造・サプライチェーン能力の拡大。
  • コスト削減と建設期間短縮に向けた、シリーズ建設の最適化。
  • 熱利用など発電以外の用途も含む、2035年以降のエネルギー需要に対応する大規模導入戦略の策定。

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