ノルウェー原子力委員会 現時点での原子力導入推進は推奨せず
22 Apr 2026
ノルウェーのT. オースラン・エネルギー相は4月8日、ノルウェー原子力委員会(Nuclear Commission)から、同国における原子力発電をエネルギー源の一つとして検討する報告書を受け取った。同報告書は、原子力について長期的選択肢と位置付ける一方、短中期の気候目標への貢献は限定的とし、現時点で導入推進は推奨せず、将来に備えた知識基盤や規制などの整備を提案している。
オースラン大臣はK. ハルヴォルセン原子力委員会委員長とともに記者会見に出席。同大臣は、「原子力委員会は包括的で綿密な作業を行っており、本報告書は原子力発電について知識と事実に基づいた議論を進めるにあたり良い基盤となる。労働党政権にとって、安全で適切なプロセスを踏み、広く徹底した議論を行うことが重要」と述べた。
原子力委員会は2024年6月に設置され、委員長にはオスロにある国際気候・環境研究センター(CICERO)のK. ハルヴォルセン所長が任命された。同委員会は、ノルウェーにおける原子力発電所建設の将来的な可能性について、ノルウェーの電力システムへの適否、研究・技術開発の現状、導入コスト、発電所の立地やインフラ設備の要件、地域や環境への影響、廃棄物問題、原子力安全、セキュリティおよび不拡散、緊急時対応や人材育成、規制や許認可プロセスの必要性などの重要課題を検討し、4月1日までに政府に報告する任務を担っていた。
本報告書では、ノルウェーのように原子力発電の新規参入国にとって、必要な規制の包括的な整備、当局間の責任分担の明確化、必要インフラの確立は、広範かつ長期にわたるプロセスであり、少なくとも20年はかかると明言。原子力は現状のコスト予測と市場価格を考慮すると採算性が乏しく、巨額投資は小規模な原子力発電の展開に見合わず、制度整備、人材確保、廃棄物管理など多くの課題があると指摘した。さらに、気候目標達成への寄与は当面限定的で、電力供給の安定性や気候目標など、原子力発電に対する国家補助を正当化する具体的な社会的根拠を見い出せず、原子力発電は2050年以前の主要対策にはなりにくいと結論付けた。一方で、将来の発展に関する不確実性、電力需要の伸びから、将来的に選択肢になる可能性があるとして、主に2050年以降の選択肢として捉える必要があるとした。よって、現時点で直ちに原子力発電の導入に向けた包括的プロセスを開始するのではなく、将来的に検討対象となった場合に備えて、知識基盤や規制の整備、スウェーデンやフィンランドとの協力を含む準備などを進めるべきと提言している。ノルウェーでは2024年時点で、総発電電力量の約9割を安価で排出ゼロの水力発電が占め、残りの大半を再生可能エネルギー源(風力、太陽光)が占めている。
ノルウェーで原子力発電が公的委員会で検討されたのは1978年以来。ノルウェー国内では、地域偏在の電力需給ギャップや、電化の推進、データセンターの建設を見据えた電力不足への懸念、水力発電の拡大にも限界があることから、天候に左右されない排出ゼロで、電力供給の可能な原子力への関心が再び高まっている。また、技術の進展や、民間事業者が自治体と協力して原子力発電を計画していることも議論を押し上げる要因となっている。
その例として、民間の事業者(ノルスク・シェルネクラフト社)は複数の地域で原子力発電所の設立を計画し、これまでに政府に対し、建設計画の提案について合計10件の届出を行っている。2026年2月には、エネルギー省、保健・ケアサービス省、気候・環境省が共同で、アウレ市およびハイム市にあるタフトイ(Taftøy)工業団地での複数の小型モジュール炉(SMR)発電所建設計画に関する環境影響評価プログラムを策定した。一方、政府は、他の届出についての対応を決定する前に、原子力委員会の評価を待つ方針を表明した。
本報告書は、2026年10月8日まで公開協議に付され、その後、政府は今後の対応方針を検討し、国会に付議する予定。





