米先進炉が初臨界を達成 原子炉パイロットプログラム初の成功事例に
10 Jun 2026
米エネルギー省(DOE)は6月4日、DOEの先進炉設計の開発・試験・認証の迅速化を目指した「原子炉パイロットプログラム」の一環として、原子力新興企業アンタレス・ニュークリア(Antares Nuclear)社が開発した先進マイクロ炉「Mark-0」(ナトリウムヒートパイプ冷却炉)が、アイダホ国立研究所(INL)においてゼロ出力臨界[1] … Continue reading試験に成功したと発表した。
今回の実証試験にはDOE、INL、BWXテクノロジー(BWXT)社に加え、将来的な利用者となる米陸軍も協力。「Mark-0」は、商用モデル「R1」マイクロ炉(電気出力100kW~1,000kW)の性能検証を目的とするもので、DOEの原子炉パイロットプログラムで進められている複数の先進炉の中で、最初に臨界達成に成功した。またMark-0は、1951年以来、INLで臨界を達成した53基目の原子炉となった。
DOEは2025年8月、同年5月発令の大統領令「エネルギー省における原子炉試験の改革」を受け、先進炉の設計試験を迅速に進めるため、DOEの管理権限の下で「原子炉パイロットプログラム」を開始した。大統領令で示された期限(2026年7月4日、独立記念日および建国250周年)までに少なくとも3基の試験炉で臨界達成を目指す目標が示され、同プログラムには10社11件の先進炉プロジェクトが選定されており、アンタレス社はその一つである。
アンタレス社は、「2026年に臨界達成、2027年に『Mark-1』でのフル出力発電実証、2028年に軍事施設への実用配備を目指す」との目標を掲げている。同社のJ. ブランブルCEOは、構想開始からわずか12か月で臨界状態の原子炉を実現したとして、先進炉の迅速な認可・実証を可能にする新たなライセンスモデルを示したと強調している。
Mark-0には、軍事作戦用の可搬式プロトタイプのマイクロ炉「プロジェクト・ペレ」向けにBWXT社が開発したTRISO燃料が使用されており、今回得られたデータはプロジェクト・ペレにも還元され、将来の軍用マイクロ炉開発に活用される予定。また、炉心物理特性や計装・制御システムの挙動などを検証し、商用炉の設計高度化に必要なデータも収集。同社によると、この経験を通じて設計・認可・建設・試験までを短期間で実施できる体制を構築し、原子炉技術だけでなく、規制対応やサプライチェーン構築の知見も大きく向上したという。
C. ライトDOE長官は今回の成果について、「40年以上ぶりに米国で民間開発の非軽水炉が臨界に到達した歴史的な出来事」であり、「米国の原子力産業復活の象徴となる瞬間だ」と評価。T. ガリッシュ原子力エネルギー担当次官補は、「1年足らずで臨界達成は不可能だと考えられていたが、それを実現したことは原子力の未来を切り開く成果である」と述べた。
DOEは今回の臨界試験について、原子炉設計の安全性と運転性能を実証するだけでなく、将来の商用炉の設計や米原子力規制委員会(NRC)の認可手続きにも役立つ重要なデータを提供すると説明している。実用化されたマイクロ炉は、地上での分散型電源だけでなく、宇宙開発や軍事施設など安定した電力供給が求められる分野での活用も期待されている。
脚注
| ↑1 | 原子炉において、熱出力がほぼゼロ(核分裂による熱がプラントの温度に影響を与えない極めて低い出力レベル)の状態で、核分裂の連鎖反応が持続する状態(臨界)に達すること。 |
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