米ABS MIT海事コンソーシアムによる船舶共同開発設計にAiPを発給
18 Jun 2026
米国船級協会(ABS)は6月5日、米マサチューセッツ工科大学(MIT)、韓国のHD現代(ヒュンダイ)傘下の韓国造船海洋エンジニアリング(KSOE)社、およびギリシャの船舶運航会社Capital Maritimeグループが共同開発した貨物船向け原子力推進システムについて、船舶への原子炉統合設計に対する基本設計承認(AiP)[1]認証機関が基本設計を審査し、技術要件や安全性の基準を満足すると承認されたことを示すもの。を発給したことを明らかにした。
同システムでは、炉心で発生した熱を運ぶ媒体として特殊な合成流体を採用し、熱出力1万~2万kWのマイクロ炉の搭載を想定。炉内圧力を大気圧に近い水準に抑えることで、原子炉容器の薄肉化、軽量化を可能とし、モジュール化による製造や輸送の効率化が期待されている。
今回のAiPは、MIT海事コンソーシアム(MIT Maritime Consortium)を通じて承認された初の事例。同コンソーシアムにはABS、HD KSOE、Capital Maritimeグループが創設メンバーとして参加しており、ABSは船級規則に基づき、原子炉と機械システムとのインターフェースについて評価した。
MIT海事コンソーシアムは、学術界と産業界が連携し、代替燃料、新型原子力技術、データ駆動型の運航戦略、サイバーセキュリティなど、海事産業の将来を大きく左右する技術の研究開発を推進する組織。共同代表兼MIT海洋技術担当教授のT. サプシス氏は、「商船隊の近代化に向けた課題解決のため、学術界と産業界の主要プレーヤーが連携して革新技術、業界標準、政策立案を目指す独自の組織であり、今回の原子炉設計は商船への原子力推進導入に向けた協力体制から生まれた最初の具体的成果である」と指摘した。
ABSのP. ライアン上級副社長兼最高技術責任者(CTO)は、「海運業界が将来に向けた新たな選択肢を模索する中、MITが開発した原子炉設計は、モジュール化製造や船舶への統合に適した特徴を備えており、安全かつ実用的な次世代商船の実現に向けた有力なアプローチの一つとなり得る技術」と評価した。
ABSはこのほど、現在はディーゼルやバッテリー電気推進など従来の動力システムで運航する船舶についても、将来的な原子力推進への転換を前提とした設計であることを証明する業界初の新たな船級認証制度(Nuclear-Ready Notation)を導入した。評価項目には、原子炉設置のためのスペース確保、船体構造、機器との接続インターフェース、安全設備などが含まれる。
2023年7月、国際海事機構(IMO)加盟国は、2050年頃までに国際海運からの温室効果ガス(GHG)排出をネットゼロとする新たな削減目標に合意。脱炭素化を背景に原子力への関心が海運業界で高まる中、同制度により原子力という将来的な選択肢を残しつつ、今後の大規模な設計変更や改造に伴うリスクやコストの低減が期待されている。
脚注
| ↑1 | 認証機関が基本設計を審査し、技術要件や安全性の基準を満足すると承認されたことを示すもの。 |
|---|





