原子力産業新聞

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ハンガリー 首都の地域暖房に原子力発電所の廃熱利用に向けて調査へ

16 Jul 2026

桜井久子

ブダペストにある熱供給プラント © BKM

ハンガリーの首都ブダペスト市で地域熱供給を運営するブダペスト公共事業会社(BKM)は71日、ブダペスト工科経済大学と共同で、パクシュ原子力発電所の廃熱をブダペストの地域暖房に利用する可能性に関する調査を開始したことを明らかにした。パクシュ発電所とブダペストの地域熱供給網を結ぶ長距離熱供給パイプラインの技術的・経済的な実現可能性を評価し、将来の投資判断の基礎資料にしたい考え。

パクシュ発電所は、旧ソ連時代に建設されたロシア製PWR=VVER-440、各50kWe級×4基構成の同国唯一の原子力発電所。198387年に運転を開始し、同国の総発電電力量の約5割を供給している。公式運転期間の30年を超過したため運転期間が20年延長され、同サイトに隣接して建設中のパクシュⅡ(ロシア製VVER-1200, 120kWe×2基)に順次リプレースしていく方針。発電所が所在するパクシュ市では1980年代から発電所の熱を地域暖房に利用しており、その実績を広域利用に発展させる構想である。

原子炉で発生する熱の一部は発電に利用されず、冷却水を通じてドナウ川へ放出されている。今夏の欧州を襲う熱波により、パクシュ発電所では6月末~7月上旬にかけて、河川の水温に関する環境規制への対応から出力制限を行っている。

BKMによると、ブダペストの地域暖房システムの冬季ピーク需要は約100kWtで、夏季においても家庭用温水の熱需要は約10kWtある。パクシュ発電所から発生する熱(温水)は、地域暖房用の輸送パイプライン約125kmを経由し、年間を通じて首都のニーズの大部分を提供できる可能性があるとしている。過去数十年の間に熱供給パイプライン技術は大きく進歩しており、熱損失は最小限に抑えられ、プロジェクトの経済性に実質的な影響を与えることはないという。また、再生可能エネルギー発電の割合の増加に伴い、国内の電力系統の制御が課題となる中、余った電力を温水などの熱に変換して蓄えるなど、高い柔軟性と蓄熱能力を備えた地域熱供給システムが電力系統の需給調整になると指摘している。

このパイプライン構想が実現すれば、ドナウ川の水温上昇の抑制や電力系統の安定化に加え、CO₂排出量の大幅な削減や、天然ガス輸入依存(輸入ガスの74%がロシア産)の緩和が期待されている。また、パクシュとブダペストを結ぶパイプライン沿線の都市の地域熱供給システムや産業用需要家の接続も可能であり、エネルギー効率と経済効率の向上が見込まれている。

BKMは、近年の夏季高温による原子力発電所の運転への影響やエネルギー安全保障の重要性の高まりを背景に、本構想が「今まさに検討すべき段階にある」としている。予備的な試算では、本構想の実現により、年間約3億㎥の天然ガスの輸入を代替すると予測している。調査は今年第4四半期に完了予定。

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