ドナウ川の水位低下で東欧の原子力発電所の運転が停止
03 Aug 2026
欧州を襲う熱波の影響で、東欧全域でドナウ川の水位が急激に低下している。歴史的な低水準となった同河川の水位低下により十分な冷却水用の水を確保できず、ハンガリーとルーマニアの原子力発電所が停止や出力制限に至った。ドナウ川はドイツ南部から黒海に注ぐ国際河川。欧州ではボルガ川に次いで2番目に長く、川沿いの原子力発電所の冷却用水に利用されている。
ハンガリーの首都ブダペストの南約125キロメートルに位置するパクシュ原子力発電所(ロシア製PWR=VVER-440、各50万kWe級×4基構成)は、同国唯一の原子力発電所。1983~87年に営業運転を開始し、同国の総発電電力量の約5割を供給している。同発電所は7月30日、2号機の出力を50%に制限。翌31日、P. マジャル首相は同発電所で記者会見し、「来週半ばには水位が非常に低下し、エネルギー危機の状況が生じる可能性がある」と述べた。同発電所の運転史上、初めて全面停止が必要となる見込みであるとして、国民や大口電力需要者に対して電力消費の抑制を呼びかけた。一方で、原子力安全にかかわる緊急事態は存在しないとも強調。当面は、大口電力需要者の消費抑制や一般家庭や公共部門の節約に加え、電力輸入で不足分を補う考えだ。
パクシュ発電所によると、7月27日には同1号機の出力を50%に制限、8月1日には停止。7月28日には同3号機の出力を50%に制限、翌29日には停止、同31日には4号機の出力を50%に制限、8月2日に停止した。現在、2号機だけが出力を下げて運転している状態。温排水による過度の水温上昇から川の生態系を保護する規制に従い、6月末から一部の炉で出力制限して運転していたが、7月中旬には解除され、定格出力で運転が再開されていた。
今回の措置の背景には、川底の土砂流出や浚渫により川床が深くなったことに加え、記録的な熱波と少雨に伴う流量の低下がある。水位が低下すると、取水ポンプの吸込口が水面より高くなり、取水できない。一方で、同発電所では、吸込配管をより深い位置へ移設するための技術的対応を開始しており、数年以内には現在よりさらに低い水位でも運転を継続できるようになると説明している。また、原子炉停止時の冷却には4基で最大2.5㎥/秒、運転時には100㎥/秒の水量が必要とされるが、水位がさらに極端に低下した場合でも、複数台の非常用ポンプの利用により、停止中の冷却状態を維持するために必要な水量は常に確保できるとしている。
下流にあるルーマニアでは、首都ブカレストの東160キロメートルに位置するチェルナボーダ原子力発電所(CANDU6, 70万kW級×2基)の1号機が、ドナウ川の流量低下を受け、冷却ポンプを保護する予防的措置から7月28日に運転を停止した。2号機は水文予測と技術的パラメータの評価後、運転を継続している。
ブルガリアのコズロドイ原子力発電所5-6号機(VVER-1000, 各104.0万kWe)もドナウ川から取水するが、取水ポンプ場が川岸を掘り込んで造られた取水池に設置され、川の水位が低い場合でも安定した稼働を確保。さらに、ルーマニア・セルビアが共同管理するダムの放流調整を受けて発電所付近の水位を維持し、運転を継続する方針である。
今夏の熱波はフランスやスイスの原子力発電所の運転にも影響を及ぼしており、6月下旬の熱波到来以降、運転停止や出力制限が実施されている。温排水による河川の水温上昇を防ぐ環境規制に従い、フランスではガロンヌ川沿いのゴルフェッシュ2号機(PWR, 136.3万kWe)、ローヌ川沿いのビュジェイ2号機(PWR, 94.5万kWe)、ムーズ川沿いのショーB-1, B-2(PWR, 各156.0万kWe)が、スイスではアーレ川沿いのベツナウ1-2号機(PWR, 各38.0万kWe)が運転停止に至った。





