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ルーマニアがチェルナボーダ3、4号機の完成に向けて戦略的運営委員会設置へ

17 Jul 2020

チェルナボーダ1、2号機はルーマニアで唯一の原子力発電設備©SNN

ルーマニア原子力産業会議(ROMATOM)は7月15日、建設途中で先行き不透明となっていたチェルナボーダ原子力発電所3、4号機(各70.6万kWのカナダ型加圧重水炉)建設プロジェクトについて、L.オルバン首相が両炉の完成に向けて戦略的運営委員会の設置を決めたことを歓迎すると発表した。

同首相のこの判断は前日付けの官報に掲載されたと伝えられており、新たに設置される委員会は建設プロジェクトを実行に移すための戦略や方策、判断等の分析と具体化に責任を負う。構成メンバーには、経済・エネルギー・ビジネス環境相や公共財務相など関係閣僚が含まれる模様である。ROMATOMは、国内の原子力発電設備の拡大は欧州連合(EU)の掲げる2050年までの脱炭素化政策やルーマニアの環境目標を達成する上で特に重要だと評価している。

チェルナボーダ3、4号機は1980年代半ばに本格着工していたが、1989年のチャウシェスク政権崩壊により、進捗率がそれぞれ15%と14%のまま建設工事が停止した。これらを完成させるという政府決定を受けて、国営原子力発電会社(SNN)は2009年にプロジェクト会社を設置したものの、同社への出資を約束していた欧州企業6社は経済不況等によりすべて撤退した。

その後、2011年に中国広核集団有限公司(CGN)が出資参加の意思を表明したことから、SNNはCGNと2015年11月に両炉の設計・建設・運転・廃止措置に関する協力で了解覚書に調印した。2019年5月にはプロジェクトの継続に関する暫定的な投資家協定を締結したが、今年1月にオルバン首相は地元メディアのインタビューで、「ルーマニア政府は中国企業との取引から撤退する方針であり、すでに新たな出資パートナーを模索中である」と述べた模様。首相のこの判断は、米国と結んだ戦略的連携関係に配慮したものとみられている。

ROMATOMによると、ルーマニアで追加の原子力発電設備を建設することは2050年までを見据えた同国の「2019年~2030年のエネルギー戦略」と「2021年~2030年のエネルギー・気候変動分野における国家統合計画」に明記されている。このため、原子力はルーマニアのエネルギー供給保証対策の一つであるとともに、脱炭素化に向けた主軸政策の一つということになる。

ルーマニアの原子力発電設備は現在、国内の総電力需要の約18%を賄っているほか、低炭素電源による発電量の33%を供給、原子力産業界における雇用1万1,000名分を維持している。建設プロジェクトが本格化すれば、この人数は1万9,000名に増大し取引総額は5億9,000万ユーロ(約720億円)に達する見通し。ROMATOMが国内原子力産業界の能力について実施した調査の結果、同産業界が3、4号機の建設プロジェクトに機器やサービスを提供することで10億~16億ユーロ(約1,220億~1,952億円)の利益が上がる可能性がある。この金額はまた、同プロジェクトにおけるエンジニアリング・資材調達・建設(EPC)契約総額の25~40%に相当するとROMATOMは指摘している。

(参照資料:ROMATOM(ルーマニア語)の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの7月16日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)

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