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ロールス・ロイス社、民生用I&C系事業をフラマトム社に売却へ

08 Dec 2020

©Rolls-Royce

英国のロールス・ロイス社は12月7日、同社の民生用原子力発電所用の計装制御(I&C)系事業を仏国のフラマトム社に売却する合意文書に調印したと発表した。

この合意に含まれるのは、仏国のグルノーブルとチェコのプラハ、および中国の北京と深セン(センは土へんに川)におけるI&C系事業の全活動と担当チームで、対象となる従業員の総数は550名。同事業による2019年の収益は9,400万ユーロ(約118億4,500万円)にのぼっている。英国内の民生用原子力事業や小型モジュール炉(SMR)の開発事業は、今回の売買の対象外。英国内の雇用に影響が及ぶことは全くなく、同社は今後も引き続き英国で低炭素な電力の供給に尽力すると強調している。

発表によると、この合意は今年8月に同社が公表した事業のさらなる簡素化戦略の一環であり、その他事業の売却益も含め、少なくとも20億ポンド(約2,778億円)以上を捻出する方針。新型コロナウイルス感染の世界的広がりにより、同社の民間航空部門はかつてない規模の打撃を被っており、同部門の再建と財政立て直しが同社にとって最大の急務となっている。

今回の合意はまた、通例通り規制上の承認等を得る必要があるため、売却手続きが完了するのは2021年の半ば頃を予定。それまでは両社の事業はともに独立性を保ち、通常の経営が行われる。

一方のフラマトム社は、この合意を通じてエンジニアリング関係の専門的知見を深め、I&Cシステムの製造能力を拡充する戦略である。同社の発表によると、原子力発電所の中枢神経であるI&C系は原子炉制御をつかさどっており、同社はロールス・ロイス社の製品や技術を取り入れて、原子力発電所の重要な安全機能をすべて統合。ロールス・ロイス社の技術はすでに世界中で稼働する150の原子力発電所に採用されているが、フラマトム社としては顧客の中でも特に、仏国の原子力発電所に優れた製品を提供していく考えである。

なお、中国関係観測者によると、中国はこれまでに導入、あるいは独自開発した原子力発電所に諸外国メーカーのI&C系技術を採用。中国国内の関連企業を通じて、I&C系技術を吸収し国産化を進めてきた。フラマトム社は中国の原子力開発利用黎明期から協力関係にあったことから、中国は同社からもI&C系のノウハウを吸収し、世界のI&C系技術開発で先頭に立つ戦略とみられる。

(参照資料:ロールス・ロイス社フラマトム社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの12月7日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)

 

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