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米エネ省の先進的原子炉実証プログラム、開発初期段階の3設計を追加支援 

24 Dec 2020

©DOE

米エネルギー省(DOE)は12月22日、「先進的原子炉設計の実証プログラム(ARDP)」で2030年代半ばの商業化をめざすカテゴリーの支援対象として、ジェネラル・アトミックス(GA)社などが開発中の比較的初期段階の原子炉設計3件を選定したと発表した。

ARDPはDOEが今年5月、原子力局(NE)を担当局として開始したもので、米国原子力産業界における先進的原子炉設計の実証を政府がコスト分担方式で支援する官民の連携プログラム。設計の成熟度に応じて、以下の3つの支援ルートが設定されている。①「先進的原子炉の実証」ルート:5~7年以内に2つの先進的原子炉設計が確実に稼働開始できるよう支援、②「将来的な実証に向けたリスク削減」ルート:2030年~2032年の商業化達成を目標に、5つの設計について技術面や運転面の課題を解決、③「2020年度予算支援の先進的原子炉概念(ARC 20)」ルート:2030年代半ばの商業化を目指して様々な革新的原子炉の概念設計開発を支援――である。

①についてDOEは今年10月、テラパワー社の「ナトリウム冷却高速炉」と、X-エナジー社の小型ペブルベッド式高温ガス炉「Xe-100」を選定。②に関しては今月16日に、ウェスチングハウス(WH)社の極小原子炉「eVinci」やBWXTアドバンスド・テクノロジーズ社の「BWXT先進的原子炉」など、5つの先進的原子炉設計を支援対象に決定した。

今回の支援は③の「ARC 20」に分類される設計が対象で、DOEは開発を進める3社に対し2020会計年度予算から2,000万ドルを支給。分担金の少なくとも20%は産業界側がマッチング・ファンド等で賄うものの、DOEが今後4年以上の期間に「ARC 20」で拠出する総額は5,600万ドル以上にのぼるとしている。

対象に選定された3設計のプログラム概要は以下のとおり。

  • アドバンスド・リアクター・コンセプツ(ARC)社が開発している「固有の安全性を備えた先進的SMR」、約3年半の投資期間の総額3,440万ドル(うちDOE負担分2,750万ドル):電気出力10万kWの予備概念設計に基づいて、免震機能を備えた先進的なナトリウム冷却SMRの概念設計を開発する。
  • GA社による「高速モジュール式原子炉(FMR)」、約3年間の投資額3,110万ドル(うちDOE負担分2,480万ドル):重要な数値指標である燃料や安全性および運転性能等を確認しつつ、電気出力5万kWのFMRの概念設計を開発する。
  • マサチューセッツ工科大学(MIT)の「横置き式コンパクト高温ガス炉(HTGR)」、約3年間の投資額490万ドル(うちDOE負担分390万ドル):モジュール方式を採用した統合型HTGR(MIGHTR)の商業化を支援するため、予備概念段階の設計を概念設計に進展させる。

今回の決定についてDOEのD.ブルイエット長官は、「安全で建設コストも手頃な商業炉の市場で、建設と運転を短・中期的に可能にするという意味でAEDPの果たす役割は重要だ」とコメント。「ARDPが支援するこれら3設計のプログラムは、米国が世界でも高いレベルの競争力を獲得していく道を拓くだろう」と述べた。

ARDPの設定期間を越える資金提供に関しては、将来的な追加予算措置やARDPの下で開発が順調に進展すること、DOEによる継続予算申請の承認などが条件になる。

(参照資料:DOEの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの12月23日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)

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