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米エネ省、先進的原子炉から出る使用済燃料の削減プログラムに4,000万ドル

24 May 2021

米エネルギー省(DOE)は5月19日、次世代の先進的原子炉から排出される使用済燃料を10分の1に削減することを目指した新たなプログラムに、最大で4,000万ドルを拠出すると発表した。

省内のエネルギー高等研究計画局(ARPA-E)が立ち上げた「放射性廃棄物と先進的原子炉における処分システムの合理化(ONWARDS)」プログラムに対するもので、ここでは放射性廃棄物の量を減らすことによって土地や大気を清浄に保ち、信頼性の高いクリーンエネルギー供給源である原子力の活用を一層拡大する方針。先進的原子炉の研究開発が実際の建設に移行しつつあることから、核燃料サイクルの廃棄物の発生を抑える全く新しい方法を開発・適用し、処分オプションが限られるために引き起こされた現在の様々な課題に取り組むことになる。

ARPA-Eは2009年にDOE内で新設された部局で、開発リスクが高すぎてDOEの他の部局や産業界で対応困難な革新的エネルギー技術の開発を専門的に支援。基礎研究よりも応用研究を対象としており、リスクが高くても大きな成果が期待できる技術に対し、通常50万ドルから1,000万ドルほど、最長3年間の資金助成を行っている。

DOEのJ.グランホルム長官は、「米国における無炭素エネルギーの半分以上を原子力が供給しているため、(ONWARDSで実施する)画期的な研究を通じて原子力の持つ潜在能力を生かしたい」とコメント。その上で、「米国は技術革新を牽引する世界のリーダーであり、電力を供給しながら環境も防護するという次世代原子力技術への投資を誇りに思う」と述べた。

DOEの発表によると、原子力は米国で最も信頼できるエネルギー源の一つであり、2020年には国内最大のクリーンエネルギー源として無炭素電力の52%を供給。発電量全体でも約5分の1を賄っているが、年間約2,000トン排出する使用済燃料については処分するか、安全に保管する必要があるとした。

ONWARDSプログラムでARPA-Eは具体的に、革新的技術を用いた先進的原子炉を特定した上で、その使用済燃料とその他の放射性廃棄物を管理・浄化・処分する方策を改善するため、画期的な技術を開発する。これにより、建設される原子力発電所の数も将来的に拡大し、温室効果ガスの排出抑制目標も達成できるとした。

使用済燃料等の発生量削減によって効果が期待できる主な技術分野として、ARPA-Eは原子燃料の利用プロセスを挙げた。廃棄物の発生量を大幅に抑えることで、本来備わっている核拡散抵抗性を増強、資源の有効活用と先進的原子炉の商業化を促進する。また、保障措置分野でセンサー技術やデータ融合技術などが改善され、核物質を正確かつタイムリーに計量することができるとしている。

(参照資料:DOEの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの5月20日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)

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