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中国海南省で「華龍一号」を採用した昌江II期工事の建設が正式に開始

01 Apr 2021

©華能集団公司

中国の5大電力会社の一つである華能集団公司は3月31日、海南島の昌江原子力発電所でII期工事(3、4号機)の建設工事が正式に始まったと発表した。同日に国家核安全局(NNSA)が両炉の建設許可を発給したのにともなうもので、報道メディアは3号機の原子炉建屋部分で最初のコンクリート打設が行われたと伝えている。

II期工事の建設工事は海南省・自由貿易試験区におけるプロジェクトの一つと位置付けられており、中国核工業集団公司(CNNC)と華能集団公司がそれぞれ49%と51%出資。総投資額約400億元(約6740億円)をかけて2025年に3号機を、2026年末までに4号機を完成させる計画である。このプロジェクトでは中国が知的財産権を保有する第3世代の120万kW級PWR設計「華龍一号」を採用しており、2019年11月には海南島でプロジェクト当事者間での起工式が執り行われた。

海南原子力発電所では現在、I期工事として出力65万kWの「CNP600」が2基稼働中。今回、華能集団公司が初めて企業主導権を握り、大型PWRを建設するというII期工事の正式着工式典には、同集団公司や海南省の知事を始め、国家能源局(NEA)やNNSA、CNNCなどから多数の幹部が出席した。知事が同プロジェクトの正式な開始を宣言したのに続き、プロジェクト企業の華能海南昌江核電公司がII期工事の準備作業等を紹介している。

また、華能集団公司の舒印彪董事長が祝辞の中で、「気候中立の達成を目標に掲げたことで、中国では高品質の電力やエネルギーの開発が促されている」と指摘。安全確保を前提に原子力発電開発を積極的かつ整然と進めることによって、中国は地球温暖化防止対策として昨年掲げた「2030年までにCO2排出量のピークアウトを、2060年には気候中立を実現する」という「3060目標」の達成に近づくことができると述べた。

華能集団公司によると、昌江II期工事の2基が完成した場合、海南省には年間180億kWhのクリーン電力がもたらされる。これは550万トンの標準炭を燃やして発電した電力量に相当し、同省では1,300万トンのCO2排出を抑制できるとしている。

なお、海南省ではこのほか、CNNCが2019年7月に同じ自由貿易試験区内で、出力10万kWの多目的小型モジュール炉(SMR)「玲龍一号」の実証炉建設プロジェクトに着手すると発表した。CNNCは2010年、仏国のPWR技術をベースに開発した100万kW級の原子炉設計「ACP1000」の小型版として、第3世代設計となる「ACP100」の研究開発を開始。同設計は2016年4月にSMR設計としては初めて、国際原子力機関(IAEA)の包括的原子炉安全レビュー(GRSR)に合格している。CNNCは当初、福建省莆田市で「ACP100」実証炉2基の建設を予定していたが、その後、建設サイトを昌江原子力発電所の近隣に移し、設計の呼称も「玲龍一号」に改めている。

(参照資料:中国華能集団有限公司の発表資料(中国語)、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの3月31日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)

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