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X-エナジー社、米ワシントン州での小型HTGRの建設で覚書

09 Apr 2021

3社による覚書の調印 ©Energy Northwest

米メリーランド州のX-エナジー社は4月1日、開発中の小型ペブルベッド式高温ガス炉(HTGR)「Xe-100」の初号機建設に向けて、西海岸最北に位置するワシントン州の2つの公益電気事業者と「3社間エネルギー・パートナーシップ」を組む了解覚書を締結した。

ワシントン州では現在、州内の使用電力を2045年までに100%無炭素にすることを目指した法令「クリーンエネルギーへの転換」に基づくプログラムを推進中。信頼性が高く廉価な無炭素電源を必要としていることから、同州内の地方自治体など27の公益電気事業者で構成されるエナジー・ノースウエスト社、および同州グラント郡の公益電気事業者であるグラントPUD社は今回、X-エナジー社と共通の目標を達成するため、相互に協力することを決定。米国で初めて、第4世代の非軽水炉型・先進的小型モジュール炉(SMR)の「Xe-100」をワシントン州で建設し、商業化の可能性を実証する。

3社は建設サイトとして、同州リッチランドの北部にあるエナジー・ノースウエスト社のサイト内を想定。同サイトでは、同社がワシントン州唯一の原子力発電所であるコロンビア発電所(120万kW級BWR)を所有・運転中である。今回の計画では、電気出力8万kWの「Xe-100」を4基接続して最大出力32万kWの発電所を建設するが、その前に3社は協力して建設プロジェクトの各段階について検討を進め、許認可手続や実際の建設と運転、および発電所の所有等について最良の取り組み方を特定するとしている。

X-エナジー社によると、「Xe-100」では電気出力とプロセス熱の生産量を柔軟に変更することが可能で、海水脱塩や水素生産などの幅広い分野に適用できる。また、建設工期が短くて済むほか、物理的にメルトダウンが発生することが無く、冷却材の喪失時にも運転員の介入なしで安全性が保たれるという。

エネルギー省(DOE)は2020年5月に開始した「先進的原子炉設計の実証プログラム(ARDP)」で、10月に同社を初回支援金の交付対象の1つに選定した。実証炉を建設するための支援金8,000万ドルを2020会計年度から交付しており、その一部は同設計で使用する3重被覆層・燃料粒子「TRISO」燃料の商業用製造施設の建設にも活用される。X-エナジー社は現時点では、米原子力規制委員会(NRC)の設計認証(DC)審査に同設計を申請していないが、2020年8月からはカナダ原子力安全委員会(CNSC)が同設計の予備的設計評価(ベンダー設計審査)を実施中である。

エナジー・ノースウエスト社のB.サバスキCEOは、「ワシントン州の将来のクリーンエネルギー社会において、先進的原子力技術は中心的な役割果たせるし、また果たすべきだ」とコメント。「温室効果ガスを排出せずに1日24時間稼働できるため、間欠性のある再生可能エネルギーとの相乗効果も高く、送電網の信頼性を向上させる点でも非常に多くのメリットがある」と指摘した。

X-エナジー社のC.セルCEOも、「このプロジェクトを成功に導く3本の柱として、当社が第4世代の革新的な原子炉設計と燃料を提供する一方、エナジー・ノースウエスト社は理想的な建設サイトと確かな運転経験、原子力に関する専門的知見を提供する。また、グラントPUD社は人材や資金など潤沢な資源を持ち経営状態も非常に良好、増大する電力需要を新たな技術で満たそうとするなど先見の明もある」と説明。これに明確な将来ビジョンを持つDOEの支援が加わったことから、「クリーンエネルギーの未来を構築する盤石な基盤は整った」と強調している。

(参照資料:X-エナジー社とエナジー・ノースウエスト社、およびグラントPUD社の共同発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの4月6日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)

 

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