8月、東京都立の工科高校など22校が集まる合同オープンキャンパス「工科高校ドリーム・フェスタ」が、東京・新宿で開かれた。
「ぼくたちが作った電気自動車に乗ってみませんか!」
「エンジンの解体が体験できます!」
高校生たちが製作した電気自動車の乗車体験での様子
夏休み真っただ中の会場には、現役高校生たちの元気な声が響く。各校のブースには、実習作品やドローン、電気工作などが並び、生徒たちは来場した中学生や保護者に、自分たちの学校で学んでいることを熱心に説明していた。
原子力関連企業が工業高校生との接点づくりに力を入れる一方、工業高校では、進学先としてどう選んでもらうかが課題となっている。東京都では、産業構造や技術の変化を見据え、工業教育の改革に取り組んでいる。その一環として、2023年度には都立の工業高校15校を一斉に「工科高校」へ改称。DXやAIなど、新たな技術に対応した教育の充実も進めている。
しかし、学校が変わり、卒業生に対する企業の需要が高まる一方で、志願状況は厳しい。東京都教育庁の担当者によると、都立工科高校の卒業生に対する求人倍率は今年度調査で約60倍。一方、入学者選抜倍率は全学科平均で0.7倍を下回る。卒業後の「出口」は広い。それでも、工科高校を選ぶ「入口」には十分な志願者が集まっていない。
今の工科高校生に聞く
それでも工科高校を進学先に選んだ生徒たちは、何に惹かれ、そこで何を学んでいるのか。会場で、進学理由や学校生活について聞いた。
来場者に説明する現役工科高校生たち
府中工科高校・機械科 2年(女子)
「もともとものづくりが好きで。この学校ではレーザー加工ができると聞いて入学しました。クラスで機械科の女子は私だけですが、みんな優しいので困っていません。作業の繊細さが楽しいです」
府中工科高校・機械科 2年(男子)
「正直、勉強があまり好きじゃなくて。工業高校に行けばすぐ就職できると思って選びました。実習では溶接が一番好きです。鉄が溶けてつながっていく過程が楽しいです」
墨田工科高校・電気科 3年(男子)
「クラスは16人で、得意・不得意に応じて半分に分かれて、みっちり教えてもらえます。在学中に電気工事士の資格も取得できました。最初は時間がかかっていた配線が、手早くできるようになった時が楽しいです」
町田工科高校・情報テクノロジー系列 2年(女子)
「もともとゲームが好きでこの学科を選びました。実習は週1回。パソコン同士をつなぐネットワークを組んだり、ホームページを作ったりしています。実習のたびにレポートを書くのは、大変ですが」
田無工科高校・建築科 3年(女子)
「二級建築士を取って、家を設計したいという夢があったので、最短距離で資格を目指せる工科高校を選びました。実際に企業に行って業務を体験する授業があり、その企業に就職することもできます」
自身も工業高校出身という町田工科高校の教諭は、「実習に集中し、ものづくりに真面目に取り組む生徒が多い」と話す。
入学後の満足度も高い。2019年にみずほ情報総研が都立高校の在校生を対象に実施した調査では、「この学校に入学したことに満足している」との問いに肯定的に回答した工業科の生徒は74.8%で、普通科の63.7%を上回った。

盛況のフェスタ、それでも課題
今年のフェスタには1日で5,000人超が来場。年々注目も高まっているが…
2024年から始まった「都立工科高校ドリーム・フェスタ」の来場者は、初年度の約3,810人から、今年は5,390人に増えた。
一方、東京都教育庁の担当者は、フェスタに足を運ぶのは、すでに工科高校に一定の関心を持つ中学生や保護者が中心で、「なかなか入学者選抜には結びついてくれない。圧倒的大多数のサイレントマジョリティにはどうも刺さっていない」と分析する。
フェスタの盛況とは裏腹に、工科高校に目を向けていない層へのアプローチには課題が残る。
進路の選択肢に入るために
工科高校の情報を、進路選択を考える中学生にどう届けるか。東京都教育庁は、ここに課題があるとみている。
ステージで自分たちの学校をPRする工科高校生たち
一番の課題は、中学校の進路指導教員へのアプローチだと担当者は話す。「おそらく先生たちが、工科高校がどういうところかというのをあまりご存じないと思うんです」
担当者によると、工科高校に子どもを通わせる保護者からは、「子どもを工科高校に通わせて満足しているが、中学校では普通科を中心に進路指導が行われ、工科高校という言葉が一度も出てこなかった」との声があったという。子どもが大学には進学しない意向を示したことをきっかけに、親子で進路を探す中で工科高校を知った。
高校側や教育庁としても、中学校を訪問して学校の説明を試みている。しかし、十分な説明時間を得られず、資料を置いて帰るだけになることが多いという。担当者は「先生方も忙しいですから」と理解を示しつつ、「工科高校の実態をプレゼンテーションする場を、なかなか与えられていない状況は苦しい」と話す。
中学校の進路指導教員には、工科高校へ足を運び、実際の学校の様子を見てほしいという。学校には専門的な設備がそろい、生徒たちは実習で機器を扱うほか、レポートや課題にも取り組む。自分のやりたいことを見つけ、それを学ぶために工科高校を選ぶ生徒も多い。
学校説明では、現役の工科高校生が案内役をつとめる。「実際の生徒の姿を見れば、『しっかりしているな』と分かってもらえると思います」
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