米廃炉会社 閉鎖サイトでの事前サイト許可を申請へ
28 May 2025
米ユタ州を拠点に原子力発電所の廃止措置や環境復旧サービスを手掛ける、エナジー・ソリューションズ社は5月13日、同社が所有する旧キウォーニ原子力発電所(PWR、59万kWe)サイトにおいて事前サイト許可(ESP)を申請する方針を明らかにした。初期計画とスコーピング、詳細なサイト・環境調査を開始する。
ウィスコンシン州に立地する、キウォーニ原子力発電所は1974年6月に営業運転を開始、2013年5月に永久閉鎖された。エナジー・ソリューションズ社は2021年5月、同発電所の所有者兼運転者のドミニオン・エナジー社から、廃止措置の実施を目的に同発電所を買収。翌5月から主要な廃止措置の作業を開始し、完了までに7~8年がかかると見込まれている。
今回ESPを取得する主な狙いは、電力会社が原子炉新規建設の投資判断をする前に、サイト特有の安全性や環境影響、緊急時計画について予め原子力規制委員会(NRC)から事前承認を得ることにある。エナジー・ソリューションズ社は、WECエナジー・グループ(WEC)と協力し、ウィスコンシン州での次世代の原子力発電の建設に取り組んでいくこととしている。
WECエナジー・グループは、ウィスコンシン州を拠点に電力や天然ガスの供給を手掛ける、同州最大のエネルギー会社。両社は現在、新しい原子力発電をキウォーニ・サイトで稼働させるため連邦政府の承認を求める「複数年」計画の初期段階にある。エナジー・ソリューションズ社のK. ロバックCEOは、「データセンター、人工知能、産業の成長によるエネルギー需要の増加に伴い、信頼性の高い無炭素電源の必要性はかつてないほどに高まっている。当社の原子力許認可とプロジェクト管理のノウハウを活用し、ウィスコンシン州の新規原子力発電の初期計画段階においてWECを支援していきたい」と抱負を語った。
この発表を受け、A. ジャック州上院議員は、「キウォーニ発電所での原子力発電の再開を長年提唱してきた私は、ウィスコンシン州とわが国が緊急に必要としているクリーンで信頼性の高いエネルギーを優先する計画の具体化に勇気づけられる。地域への投資により経済的活力を回復し、長期的なエネルギー安定供給の確保のため、コミュニティを結集していきたい」と語った。
エナジー・ソリューションズ社は2024年12月にカナダのテレストリアル・エナジー社と協力覚書を締結している。両社は、エナジー・ソリューションズ社が廃炉プロセスで取得した旧原子力発電所サイトにおいて、テレストリアル社が開発するSMRである一体型熔融塩炉(IMSR)の設置と展開の検討で協力することになっている。エナジー・ソリューションズ社は、ウィスコンシン州キウォーニ原子力発電所のほか、ネブラスカ州フォートカルホーン発電所、カリフォルニア州サンオノフレ発電所、ペンシルバニア州スリーマイル・アイランド発電所(2号機)の廃止措置を実施中。ウィスコンシン州ラクロス発電所とイリノイ州ザイオン発電所の廃止措置作業は完了している。
ウィスコンシン州では、データセンターによる電力需要の急増が予想されており、超党派の州議会議員らが今後数年間にウィスコンシン州により多くの原子力発電を導入することを提唱。ウィスコンシン州上院は5月15日、州の公共サービス委員会に原子力発電の立地調査の指示を承認する法案を可決した。これを受け、法案提出者のひとりである、J. ブラッドリー州上院議員は、「ウィスコンシン州は、可能な限り早期に原子力発電の拡大を推進する準備を整えておく必要がある。州が成長し、将来の世代にわたって経済を活性化させるための大きな利点となる可能性がある」と述べた。
ウィスコンシン州には、他にポイントビーチ原子力発電所1-2号機(PWR、各64万kWe)が1970年代から稼働している。同州における原子力発電シェアは約16%(2023年)。2020年11月にはNRCに、2度目となる運転認可の更新申請をしている。認可されれば80年運転が可能になる。