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米ニュースケール社製SMR 増強版で2回目の「標準設計承認」取得

02 Jun 2025

桜井久子

ニュースケール社製SMRを採用する
ENTRA1 エナジー・プラント 完成予想図
Ⓒ NuScale Power

米国のニュースケール・パワー社は529日、米原子力規制委員会(NRC)から、同社製の小型モジュール炉(SMR)のニュースケール・パワー・モジュール(PWRNPM7.7kWe)の標準設計承認(SDA)を取得した。NRC20231月にSDA申請、同7月に受理されていた。

ニュースケール社は、米国でSMR設計の設計承認を受けた唯一のSMR開発企業であり、20209月のNPM5kWe)の設計に対するSDA取得に続き、今回で2回目。今回の7.7kWe版の承認は、528日のNRCスタッフによる最終安全評価報告書(FSER)の発行に基づくもの。出力を増強した7.7kWe版の設計は、当初、顧客であったユタ州公営共同事業体(UAMPS)が希望する出力レベルに応じて、同NPM6基搭載した原子力発電設備VOYGR-6(合計出力46.2kWe)の建設を念頭に置いていたものの、202311月に経済性を理由に同建設計画は打ち切りとなっている。

今回のSDA発給により、ニュースケール社の独占的なグローバル戦略パートナーで、同社のSMRの商業化、流通、展開の独占権を有するENTRA1エナジー社は、同SMRを内蔵したENTRA1エナジー・プラントにより、オフテイカーや消費者に信頼性の高いカーボンフリーのエネルギーを供給していく計画だ。初号機は2030年までの導入目標としている。

7.7
kWe版の設計は、すでに承認された5kWe版のNPMを部分的にベースにし、運転システムと安全機能において、対流や重力などの自然の受動的安全機能を継続して採用。固有の安全性能により異常な状況下で原子炉を自動停止し、人の介入や追加の注水、外部からの電力供給なしで原子炉の冷却が可能である。また、出力増強とモジュール数の調整により増加する容量ニーズに対応、プラントの建設と運用の全体的な経済性も向上している。当初は今夏の終わりに承認される予定だったが、NRCの審査プロセスが早期に完了した。

なお、ニュースケール社は201612月に5kWe版の設計認証(DC)審査をNRCに申請しており、20173月にNRCは受理。その後、米国内で建設可能な標準設計の一つとして認証適用するための規制手続き「最終規則」の策定の完了を受け、20231月にSMRとしては初となるDCが発給された。DCの発給により、今後、建設運転一括認可(COL)や建設許可の申請(CPA)において設計に関する審査を受ける必要がなくなるため、審査の大幅な合理化が期待される。米エネルギー省(DOE)はこれまで、ニュースケール社のSMRプラント設計と許認可取得活動に5.75億ドル(約825億円)以上を支援しているという。

ニュースケール社のJ. ホプキンスCEOは、「今回のSDA発給は、ニュースケール社だけでなく、業界全体にとって歴史的な出来事。当社は10年以上にわたり、厳格な安全基準で国内外に認められるNRCと設計承認に向けて協力してきた。当社はENTRA1社と、クリーンで信頼性が高く、安全なエネルギーをオフテイカーと消費者に幅広く供給していく」と語った。

ニュースケール社のSMRはモジュール統合型のPWRで、7.7kWの電力、25kWの熱を生成するNPMを最大12基連結。顧客のニーズに合わせて柔軟に拡張可能である。発電、地域暖房、海水淡水化、商業規模の水素製造、その他のプロセス熱として供給し、世界中の多様な顧客にサービスを提供する体制を整えているという。

ニュースケール社は現在、ルーマニアのロパワー・ニュークリア(RoPower Nuclear)社が計画する、NPM7.7kWe)を6基備えた合計出力46.2kWeSMRプラントの基本設計(FEED)作業を実施中。また製造パートナーである韓国の斗山エナビリティ社と協力して12基のNPMを製造中で、受注の拡大を目指している。

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