Google 核融合プラントから電力調達へ
03 Jul 2025
米大手IT企業のGoogle社は6月30日、米国のCommonwealth Fusion Systems(CFS)社と戦略的パートナーシップ強化の一環として、CFS社が開発する商業用核融合発電所「ARC」から20万kWeの電力購入契約(PPA)を締結した。
CFS社は、核融合エネルギーの商業化を目指す米国のスタートアップ企業。マサチューセッツ工科大学(MIT)からスピンアウトし、高温超伝導(HTS)磁石技術を活用した核融合炉の開発を行っている。2030年代初頭のARCの送電開始を目標に、その先駆となる実証炉SPARCの建設を進めているところ。トカマク型の核融合炉であるSPARCはARCの建設に必要な技術や物理学などの検証を目的に、2026年の初プラズマの生成を計画する。ARCは「affordable(手頃で)、robust(頑強な)、compact(コンパクト)」の略で、SPARCは前述の頭文字に「smallest possible(可能な限り小さい)」を加えたもの。
ヴァージニア州チェスターフィールド郡に立地予定のCFS社のARC発電所の出力は40万kWe。Google社はその半分の電力を調達することになる。今回の契約では後続のARC発電所からも電力を購入するオプションを含む。CFS社は2018年の設立以後、20億ドル以上の資金を調達しており、Google社は2021年からCFS社にマサチューセッツ州デヴェンズでのSPARCの開発に向けて投資している。今回の契約と併せて、同社への出資比率をさらに増やしたというが、詳細は非公開。
CFS社は、核融合エネルギーは他のエネルギー源のように燃料や天然資源の制約がないため、変革をもたらすエネルギー源となる可能性を秘め、安定してクリーンな24時間発電が可能であると指摘している。電力需要の急増に対応し、産業の成長、輸送の電化、家庭や企業の電化、さらには人工知能(AI)やその他の高度なコンピューティングの利用増加に貢献すると強調する。順調に進めば、ARCが世界初のグリッド規模の核融合発電所になるという。
Google社の先進エネルギー部門の責任者であるM. テレル氏は、「核融合技術には、世界のエネルギー需要に応えるための変革的な潜在能力があると確信しており、CFS社が必要とする科学的および工学的なマイルストーンを達成するために支援をしていきたい」と語った。
CFS社のB. マムガードCEOは、「Googleとの戦略的契約は、SPARCで核融合エネルギーを実証し、商用ARC発電所を稼働させるための第一歩。当社は核融合エネルギーによって信頼性のある豊富なクリーンエネルギーの提供能力を実証し、経済成長の促進と生活向上のために必要な規模で、市場最大の市場転換の実現を目指していく」と意欲を示した。
昨今、急速に進むデジタル化と生成AIの台頭により、Amazon、Google、Microsoftといった巨大IT企業は大量の電力を必要とするデータセンターを拡充しており、クリーンで安定的かつ持続可能な電力供給源として原子力発電が注目されている。Google社は2024年10月、米原子力新興企業のケイロス・パワー社と2035年までにケイロス社が開発する先進炉の複数基、合計出力にして最大50万kWeの導入による電力購入契約(PPA)を締結したほか、今年3月、2050年までに世界の原子力発電設備容量を少なくとも3倍に増やすという目標を支持する、大手IT企業を含む14社による誓約にも参加。今年5月には、米国の先進原子力プロジェクト開発会社Elementl Power社と先進的原子力プロジェクトのサイト開発への資金提供に関する契約を締結した。Google社は、今後10年以内にクリーンな電力供給に有望な初期段階の技術への支援として、豊富で持続可能なエネルギー供給の上で変革をもたらす可能性のある核融合を電力供給源のラインナップに加えた。