増井理事長 OCCTOの融資制度に5項目を要望 南鳥島の文献調査にも言及
10 Mar 2026
日本原子力産業協会の増井秀企理事長は3月5日、定例記者会見を行った。
増井理事長は冒頭、経済産業省資源エネルギー庁が昨年12月に募集を開始した電力システム改革の検証を踏まえた制度設計WGの取りまとめ(案)に関するパブリックコメントについて、日本原子力産業協会として同案に対する意見を2026年1月28日付で提出したことを紹介した。
まず同件について増井理事長は、第7次エネルギー基本計画で、原子力発電を含む脱炭素電源への投資促進に向け、政府の信用力を活用した資金調達の仕組みを検討する方針が示されたことに言及。これを受け、電力広域的運営推進機関(OCCTO)が資金を貸し付けるスキームの具体化が議論されていると説明し、こうした制度設計に関し、主に次の5点を要望したという。
まず1点目は融資条件について。政府の信用力を活用する制度である以上、民間金融機関のように利潤確保を前提とする必要はなく、可能な限り低金利で資金を供給する仕組みとすべきだとした。
2点目は融資額の上限について「事業費の3割程度」が目安とされているが、原子力発電は投資規模が極めて大きいことから、案件ごとの事情に応じて柔軟に条件を設定できるよう求めた。
3点目は、事業者に帰責性のない事象や事業者が自主的な安全性向上を進めていく際には巨額の資金が必要と考えられることから、さまざまなケースに対応できる融資の仕組みを検討すべきだと進言した。
4点目は債務保証制度の導入について、米国の一部の州では政府による債務保証制度が整備されている例を挙げ、日本でも同様の制度の導入を提案した。
5点目は原子力損害賠償制度について、日本では事業者が原則として無限責任を負う制度となっており、事業者の予見可能性を向上させるためにも、早急な制度の見直しを求めた。
次に、増井理事長は4月14日、15日の2日間にわたり開催する第59回原産年次大会の詳細を説明し、同席した記者に参加を呼びかけた。
今年の同大会のテーマは「原子力の最大限活用を支える人材戦略」で、開会セッションの基調講演では、海外機関であるOECD/NEA(経済協力開発機構/原子力機関)と共同開催することになっており、W.D.マグウッド事務局長が登壇する予定だという。また特別講演では、日本原子力産業協会の三村明夫会長が「未来を選択する会議」の共同代表として、日本の人口減少の現状と対応策について講演するほか、原子力委員会の上坂充委員長からも、原子力人材に関する講演が行われる。
同大会では、原子力人材の確保・育成をテーマに複数のセッションを実施。原子力発電所の新規建設を進める場合に必要な人材の規模や職種について、各国の調査結果などを紹介しながら、人材需給のギャップの実態を共有する予定だ。
また、人口減少により人員確保が難しくなる中、限られた人員で高品質な業務を維持するための取組み、また、業務の標準化技術の活用などについて議論する。そして、「廃炉に挑む原子力人材の叡智と情熱」と題した福島セッションでは、東京電力の副社長が福島第一原子力発電所の廃炉の進捗状況や人材育成の取り組みを紹介するほか、廃炉分野に関わる若手技術者や高専・高校の教員、学生らが参加し、今後の廃炉作業への思いや展望を共有するという。
会見の後半、記者との質疑応答では、高レベル放射性廃棄物の最終処分を巡る南鳥島での文献調査の動きに関する質問が寄せられた。
経済産業省から小笠原村への文献調査に関する申し入れについて、増井理事長は「大変注目すべき動きであり、今後の進展に期待している」と述べた。何より、国から申し入れが行われた点について、画期的な動きだと評価した。そして、文献調査に進んだ関係自治体が増えることで、全国的な議論に期待を寄せた。
増井理事長は、南鳥島は人が居住する地域から離れていることや、太平洋プレート上に位置し地盤が比較的安定している可能性を指摘する専門家の見方を紹介。「日本で処分場を検討する際、まず検討すべき場所のひとつだとする意見もある」とコメント。一方で南鳥島は東京本土から約2000km離れており、輸送やコスト面の課題についても言及。建設資材などは海上輸送に頼る必要があり、他の候補地と比べて諸々のコストは高くなる可能性があるとした。また、高レベル放射性廃棄物の輸送には相応の警備体制が必要になると指摘している。
そのうえで「本土から大きく離れた地点を処分場とすることには利点と課題の双方がある」との認識を示した。





