加速キッチン 中高生が素粒子探究成果を報告
31 Mar 2026
素粒子や宇宙線をテーマとした中高生の探究活動を支援する「加速キッチン」の進捗報告会が3月29日、東京大学本郷キャンパスで開かれた。都内近郊の中高生ら約10人が参加し、自ら取り組んでいる探究活動の進捗を発表するとともに、今後の課題などについて議論した。普段は各自が自宅や学校で探究活動を行う中、研究内容を共有する場となった。
加速キッチンは、早稲田大学理工学術院総合研究所の田中香津生准教授が主宰する教育プログラムで、2020年に活動を開始した。中高生に組み立て式の素粒子検出器を無償で貸与し、観測・解析やレポート作成を、研究者や大学生メンターの支援のもと進める。交流機会も設けているがオンラインを基盤としており、現在は全国や海外から約100人が参加している。進捗報告会は年2回開催し、春は対面、秋はオンラインで実施している。
報告会では、宇宙線と気象条件の関係や太陽活動との相関、放射線の遮蔽効果の測定など、生徒が自ら設定したテーマに基づく発表が行われた。探究の途中経過の共有を重視し、測定手法やデータ解釈、今後の展開についてインタビュー形式で議論が行われた。
都内から参加した女子中学生は、宇宙線の検出数の変化をもとに流星群との関連を探るため、昨年秋から自宅で観測を続けている。宇宙への関心をきっかけに参加したという。「学校の授業は方法が決められているが、ここでは自分で考えて進める必要がある。大変だが楽しい」と話す。データ解析に苦労しながらも、自ら課題を設定し、探究を進めている。
同じく参加者の電気工学を学ぶ国立高専生は、小学1年生の時に研究施設を訪れ、宇宙線が人体を通過する様子を可視化する展示を見たことをきっかけに関心を持った。目に見えないものが身近に存在し、物質を通り抜ける性質に魅力を感じたという。同プログラムに参加後は、他のメンバーと協力し、日本と英国での比較観測に取り組み、緯度や地磁気が宇宙線の到来に与える影響を検証している。「自分で組み立てた装置で宇宙線を測れるのは夢のようだ」と語り、留学も視野に入れるなど、活動を通じて関心が具体的な進路選択へとつながっている。
活動の目的について田中准教授は、「素粒子の専門家を育てることがゴールではない。6年間の取り組みの中で、放射線医療に関心を持って医学分野に進むケースや、国際分野に関心を広げる例もある。素粒子や放射線をきっかけに、自身の興味を起点として進路を選択することは、人材育成の本質に近い」と指摘する。その上で、「今後はより学際的な人材が求められる中、こうした関心を起点に人材が各分野に広がっていくことが重要だ」と話した。
同プログラムは募集期間を設けず、興味を持った時点で参加できる。参加のハードルを下げることで、探究を始めるきっかけを広げる取り組みとなっている。





