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原子力小委で朝野委員 「公益価値と投資合理性のギャップ埋めよ」

05 Jun 2026

石井敬之

6月5日に開催された総合資源エネルギー調査会・原子力小委員会において、朝野賢司委員(電力中央研究所 社会経済研究所 副研究参事)は、経済産業省が示した「今後の原子力政策の方向性と行動指針」改定案について、事業環境整備の具体化を歓迎する一方、「なお不十分」と指摘。自由化された電力市場では、原子力発電は「発電事業者にとって我が国における最大級のリスク資産」であり、民間企業の投資判断を後押しするためには、国によるリスク分担の明確化が必要との考えを示した。

朝野委員はまず、行動指針案について、原子力投資に伴うリスク要因を明確に整理したことや、事業環境整備を政策の柱として位置付けたことを評価した。具体的には、初期投資負担の大きさやリードタイムの長期化、市場価格変動による収入見通しの不確実性、バックエンドや許認可に関するリスクなどが明記されたことを評価。また、長期脱炭素電源オークションの改善に加え、英国サイズウェルC建設プロジェクト(SZC)で導入された規制資産ベース(RAB)モデルの教訓、原子力損害賠償制度の見直し、地元合意形成や許認可手続きの円滑化などが盛り込まれたことについても、「これまでの小委員会での議論を受け止めた内容」と述べた。

一方で、将来像として示された原子力利用の見通しを実現するための事業環境整備としては、なお不十分との認識を示した。

朝野委員は、政府の信用力を活用した融資制度の検討は重要としながらも、「借入を増やすだけでは原子力への投資判断には足りない」と指摘。その理由として、自由化された電力市場において原子力発電は「発電事業者にとって我が国における最大級のリスク資産」であると説明した。

具体的には、1兆円を超える初期投資、10年以上に及ぶ建設期間、運転開始まで収益を生まない事業構造に加え、規制変更に伴う追加投資、バックエンド対策、原子力損害賠償制度、地域合意形成など、多様なリスクが重層的に存在すると指摘。「他産業を見渡しても、これほど巨大かつ長期にわたり、政治・社会・技術のリスクが一体となった資産はほとんどない」と述べた。

さらに、こうしたリスクに見合う収益を市場で確保することが難しい点も問題視した。電力市場では電気は電源を問わずすべて同質の商品として取引されるため、原子力特有のリスクを、販売価格へ反映させることが困難であると説明。脱炭素の価値や容量としての価値の評価制度は存在するものの、「原子力特有の巨大なリスクを十分に価格化できているわけではない」と指摘した。その結果として、「発電事業者が競争環境の中で自社のバランスシートにこうしたリスクを抱え込む動機は極めて乏しい」ことから、むしろ投資を見送る方が、取締役会や株式市場に対して合理的に説明しやすい状況にあるとの見方を示した。

また朝野委員は、エネルギー安全保障や脱炭素、電力システムの強靱化、経済安全保障といった公益的価値が原子力に期待されている一方で、それらの価値を事業者の収益として十分に評価されていないことが問題の本質であると指摘。「公益的には必要だが、民間企業の投資対象としては合理的な投資判断を行いにくい。このギャップを埋めることこそ事業環境整備の核心だ」と強調した。

その上で、必要なのは旧来の総括原価方式への回帰ではなく、「民間の事業者にとって原子力を、巨大なリスク資産として放置するのではなく、エネルギー安全保障や脱炭素、レジリエンス、経済安全保障に資する国家インフラ資産として位置付け直す制度設計」であると提言。建設期間中の費用回収や規制変更リスク、バックエンド対策、原子力損害賠償法など、民間では負いきれないリスクについては、一定の範囲を超えた部分を、国が引き受ける仕組みを明確化すべきとの考えを示した。

そして、「原子力を含む大規模かつ安定的な電源については、民間企業に使命感で投資を求めるのではなく、投資することが合理的だと説明できる制度を整えることが重要だ」と述べた。

 

※同小委会合については、後日詳報

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