NASAとDOE 宇宙探査向け原子力技術開発を加速
21 Oct 2026
米航空宇宙局(NASA)と米エネルギー省(DOE)は10月8日、宇宙探査向け原子力技術開発の加速に向けて覚書「宇宙原子力発電・推進分野における米国の主導的地位の確立(Accelerating American Leadership in Space Nuclear Power and Propulsion)」を締結した。NASAの J. アイザックマン長官とDOEのC. ライト長官が署名し、2026年11月1日に発効する。
今回の覚書は安全性を最優先に、先端研究や原子燃料の製造から、厳格な試験、打上げと運用に至るまで、宇宙用原子力技術の開発全般にわたる協力の枠組みを定めたもの。米国が宇宙探査における原子力技術の開発から実用化までを一体的に進め、国内の宇宙原子力産業基盤の強化と宇宙原子力分野での国際的な主導権の確保をめざしている。
この協力の背景には、D. トランプ米大統領による2025年12月の大統領令「米国の宇宙における優位性確保」がある。同令ではNASAに対し、2030年までに月面原子炉を運用可能な状態にするよう指示。月面では、約2週間ごとに昼と夜が入れ替わるため、将来の長期滞在型のミッションでは日照条件に左右されない原子力による電力供給が重要になる。
宇宙用原子力技術の中核となる計画の一つが、2028年までに打上げを予定する原子力電気推進(NEP)を採用した惑星間宇宙船「スペース・リアクター1(SR-1)フリーダム」。原子力推進技術を実際の深宇宙探査に適用する計画で、実現すれば、原子力推進技術が実験室での研究段階から実運用へと進むことになる。これに続く「ルナー・リアクター1(LR-1)」は、月面で使用する核分裂発電システムで、居住区や通信、機器、ローバー(探査車)など、重要な月面月面の重要インフラにエネルギーを供給し、将来の火星ミッションを見据え、深宇宙探査で求められる厳しい電力供給条件に対応できる技術の確立を図る考えだ。
NASAとDOEは、核分裂炉だけでなく、放射性同位体熱電気転換器(RTG)システムの活用も進める。RTGは放射性同位体の自然崩壊で生じる熱を利用する電源。2028年打ち上げ予定の土星の衛星タイタン探査機「Dragonfly」には、多目的RTGと24基の軽量放射性同位体ヒーターユニットが搭載される。これらは探査機への熱や電気の供給を担い、Dragonflyはタイタンの複数地点を飛行・探査し、生命の存在可能性を調べるという。また、火星で過去および現在の生命の可能性を調査する欧州宇宙機関(ESA)の「Rosalind Franklin」ローバーに対しても、NASAとDOEは同様のヒーターユニット24基を提供する計画である。





