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独政府、脱原子力にともなう原子力事業者4社への補償金額で合意

08 Mar 2021

バッテンフォール社が一部所有していたドイツのブルンスビュッテル原子力発電所©Vattenfall

ドイツの連邦政府は3月5日、福島第一原子力発電所事故にともない脱原子力の達成時期を早めたこと等に対する補償金として、総額24億2,800万ユーロ(約3,134億円)を支払うことで原子力発電所を保有する電気事業者4社と合意に達したと発表した。

また、これら4社はこの合意に基づき、連邦政府を相手取って係争中の関係訴訟をすべて取り下げることも約束。これらの合意事項は今後、ドイツ議会における審議と欧州委員会(EC)の承認を経て、国家と特定企業間の法的関係を定めた公法、およびドイツ原子力法の関係条項に盛り込まれることになる。

補償額の内訳は、ドイツの原子力発電所の一部所有権を保有するスウェーデンのバッテンフォール社に14億2,500万ユーロ(約1,839億円)、RWE社に8億8,000万ユーロ(約1,134億円)、EnBW社に8,000万ユーロ(約103億円)、E.ON社の子会社であるプロイセン電力に4,250万ユーロ(約55億円)となっている。

連邦政府が進める「遅くとも2022年末までに国内すべての原子力発電設備を閉鎖」という計画に影響はなく、連邦政府は閉鎖される前に発電できるはずだった電力量への補償(RWE社とバッテンフォール社)をこの金額で実行。2010年10月に「原子力発電所の運転期間延長法」が成立した後、電気事業者が発電所の運転期間を延長するために投入した金額も埋め合わせる(EnBW社など)ことになる。

1998年に脱原子力政策が打ち出されたドイツでは2000年、原子力発電所を段階的に閉鎖することで連邦政府と電気事業者が合意した。送電開始から数えて32暦年という通常運転期間をベースに、各原子力発電所の残余運転期間と残余発電量を計算しており、再生可能エネルギーに移行するまでの期間、原子力によってクリーンかつ安定したエネルギーの供給を合理的に行うはずだった。また、2010年の「運転期間延長法」により、この当時稼働していた全17基の原子炉は、核燃料税およびエネルギー気候基金への払い込みと引き換えに、平均で12年間運転を延長できる見通しだった。

しかし、福島第一原子力発電所事故の発生を受けて、連邦政府はその直後に一時的に運転を停止させていた古い原子炉7基と、改修工事のために長期停止中だった1基をそのまま永久閉鎖。これに加えて、1980年以降に運転開始した6基を2021年までに永久閉鎖するほか、残り3基も2022年までに閉鎖することを決定した。

このような措置に対し、連邦憲法裁判所 は2016年12月と2020年9月に「電気事業者への補償が必要」との裁定を下している。ただし、その補償額とカバー範囲については連邦政府と電気事業者の間で合意に達していなかった。

今回の合意により、プロイセン電力とバッテンフォール社は共同保有していたクリュンメル原子力発電所とブルンスビュッテル原子力発電所(ともに2011年に閉鎖済み)について、バッテンフォール社が保有する分の残余発電量をプロイセン電力が買い取り、自社発電所に割り当てることが可能になった。また、RWE社はミュルハイム・ケールリッヒ発電所(閉鎖済み)が発電するはずだった259億kWhについて、1MWhあたり33.22ユーロ(約4,288円)を受け取るほか、同発電所に投資した金額についても約2,000万ユーロ(約26億円)が補償されるとしている。

(参照資料:ドイツ連邦政府(ドイツ語)バッテンフォール社プロイセン電力(ドイツ語)RWE社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの3月5日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)

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