原子力産業新聞

国内NEWS

政府「電力需給に関する検討会合」を5年ぶりに開く、総合対策を決定

07 Jun 2022

会見を行う萩生田経産相(6月初めの閣議はクールビズ啓発のため沖縄の夏の正装「かりゆし」着用が慣例となっている、インターネット中継)

2022年度の夏季・冬季の電力需給見通しが極めて厳しい状況にあることを踏まえ、政府は6月7日、関係閣僚らによる「電力需給に関する検討会合」を5年ぶりに開き、(1)供給対策、(2)需要対策、(3)構造的対策(予備電源の確保、燃料の調達・管理の強化など)――を3本柱とする総合対策を決定した。

2022年度は夏・冬とも電力需給は極めて厳しい見通し(資源エネルギー庁発表資料より引用)

資源エネルギー庁では、10年に1度の厳しい暑さ・寒さを想定し、夏季・冬季の電力需給を検証。それによると、今夏、7月の電力供給は東北・東京・中部エリアで安定供給に最低限必要な予備率3%を辛うじて上回る3.1%と非常に厳しい見通し。さらに、冬季は、1、2月、本州内の東北を除く全エリアで予備率3%を確保できず、東京エリアでは予備率がマイナスとなることが見込まれており、「国民全体で一層の節電に取り組まなければ、2022年度はさらなる電力需給ひっ迫に直面する恐れがある」と危惧されている。

資源エネルギー庁が検討中の省エネ・節電を呼びかけるリーフレット(資源エネルギー庁発表資料より引用)

萩生田光一経済産業相は、同日の閣議後記者会見で、供給対策として、休止電源の稼働、追加的な燃料調達、再生可能エネルギーや原子力など、非化石電源の最大限の活用を図るとしたほか、需要対策として、「この夏は節電の数値目標は定めないが、全国を対象にエアコンの室内温度を28℃に設定する、不要な照明は消すなど、できる限りの節電・省エネに協力して欲しい」と強調。東日本で原子力発電所の再稼働が進まぬ現状に関しては、「電力安定供給の確保に当たって、原子力発電所の再稼働は重要。東日本に限らず再稼働が円滑に進むよう、産業界に対し事業者間の連携による安全審査への的確な対応を働きかけるとともに、国も前面に立ち、立地自治体など、関係者の理解を得られるよう粘り強く取り組んでいく」と述べた。資源エネルギー庁では、現在、省エネ・節電を呼びかけるリーフレットの作成を急いでいる。

3月の東日本における電力需給ひっ迫などを踏まえ、総合資源エネルギー調査会では、これまでにない頻度で会合を開き、電力需給見通しの精査、対策の検討を重ねている。4月以降では、定期検査に伴い3月から停止している関西電力高浜3号機(PWR、87万kW)が、設備トラブルにより工事終了時期が未定となり、夏季、冬季とも供給力の見通しが減少。一方で、石炭ガス化複合発電(IGCC)実証試験機の勿来IGCCパワー(石炭、52.2万kW)、広野IGCCパワー(石炭、54.3万kW)や、JERA姉崎新1~3号機(LNG、各64.7万kW)など、定期点検期間の短縮や試運転開始時期の前倒しにより追加の供給力となり得るプラントもある。

cooperation