原子力産業新聞

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「世界の原子力発電開発の動向2025」刊行

07 Apr 2025

石川公一

日本原子力産業協会の増井秀企理事長は4月4日、記者会見を行い、「世界の原子力発電開発の動向2025年版」の刊行を発表。世界で発電可能な原子力発電所の合計設備容量が、約4億1,600万kWと、過去最高を更新したことを明らかにした。

同書は、原産協会が毎年発行している出版物だが、今回より、見せ方の工夫として、インフォグラフィックを採用し、情報・データをビジュアル化している。

増井理事長は、このインフォグラフィックをもとに説明。現在、世界の原子力発電所は、32か国で436基・41,698万kWが運転中、17か国で75基が建設中だ。今回の調査結果として、「エネルギー安全保障と脱炭素化、電力需要増を背景に、原子力への期待が高まっている」と概括した。世界の原子力発電利用国の設備容量は、上位順に、米国、フランス、中国、日本、ロシアで、基数の観点では中国が世界第2位だ。また、総発電電力量に占める原子力の割合が高い国はフランスがトップで64.8%となっている。

増井理事長は、2024年の動きとして、営業運転を開始したプラントの総発電設備容量が706kW、閉鎖になったプラントは同306kWで、差し引きすると400kW程度増えていると説明。さらに、新たに原子力発電所を着工した国・基数について、中国、ロシア、エジプト、トルコをあげる一方、「過去5年間に着工した42基は、全て中国とロシア製のプラント。西側諸国と体制の異なる2か国が原子力の新規建設を席巻している状態」と、中国とロシアの躍進ぶりを示した。この他、SMR(小型モジュール炉)については、カナダのダーリントン・サイトにおけるGE日立ニュクリアエナジー(GEH)社製「BWRX-300」の開発状況にも言及。産油国であるUAEによる原子力開発について記者から質問があったのに対し、増井理事長は「昨今の脱炭素化に向けた動きも要因では」などと応えた。

また、国際エネルギー機関(IEA)がまとめたデータセンター・AIなどに伴う世界の電力需要推移から、高予測と低予測のいずれについても将来的に「増加する」との見通しを示し、海外のIT企業が原子力に注目する背景を説いた。

「世界の原子力発電開発の動向2025」は、4月25日に刊行予定。〈ご購入は こちら

この他、増井理事長は、来る489日に開催される「第58回原産年次大会」について紹介。今回は「新規建設の実現に向けて」をテーマとし、新規建設に向けた資金調達・投資回収等を議論することになっている。

*「世界の原子力発電開発の動向2025年版」のWebコンテンツはこちら よりご覧ください。

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