科学技術の発展と社会の在り方をテーマに高校生の作文コンクール
08 Apr 2026
日本科学技術ジャーナリスト会議(JASTJ)は3月26日、科学ジャーナリスト賞創設20周年記念の高校生作文コンクール(共催:東京都市大学、東京理科大学理数教育研究センター)の入賞3作品の表彰式を開催した。
同コンクールは、指定された課題図書を読み、科学技術の発展や社会の在り方について自らの考えを作文にして表現するもの。課題図書には、「情報パンデミック あなたを惑わすものの正体」(読売新聞大阪本社社会部)、「江戸の骨は語る 甦った宣教師シドッチのDNA」(篠田謙一)、「生命の星の条件を探る」(阿部豊)の3冊が指定され、応募者はこれらを踏まえ、自身の考えや提案を論じた。
入賞したのは、Harrow International School Appi Japanの大塚蓮さん、吉祥女子中学・高等学校の辻本伸子さん、福井南高等学校の世継真奈美さんの3名。
大塚蓮さんは、「骨が僕に語りかけたこと」と題した作文の中で、骨に興味を持ったきっかけや、課題図書の著者である篠田謙一氏との出会いを通じ、自身の科学への関心がどのように広がってきたかを論じた。大塚さんは科学を好きな理由について、「分からなかったことを知る面白さ」や「身近な疑問が解決する楽しさ」の積み重ねにあると説明。こうした探究心が現在の自身を形作り、研究や知識の拡大につながっていると述べた。
辻本伸子さんは、「情報洪水の渦の中で」と題した作文を発表。自身の新聞委員会での活動を通じ、「分かりやすく情報を伝える方法」を模索する中で、メディアや言語の伝達機能等に関心を広げ、探究活動に取り組んだという。探究では、X上で拡散された情報の収集・分析や、陰謀論が支持される背景等を考察。さらに、課題図書『情報パンデミック あなたを惑わすものの正体』から、「人は不安や孤独を埋めるために誤情報を手にする場合がある」との示唆を踏まえ、誤情報を信じる人々へ一方的に説得するのではなく、「相手の声に耳を傾けることや対話が重要だ」と話した。
世継真奈美さんは、「情報の海のなかで」と題した作文を発表。世継さんが在籍する福井南高校では、長年にわたりクリアランス金属の理解促進活動に取り組んでおり、自身もその活動に参画し、原子力発電のバックエンドに関する探究活動を行っている。
過去に同校が実施した高校生向けの意識調査では、原子力を学ぶ媒体として「メディア」が「学校の授業」を上回る結果となり、世継さんは「影響力の大きさを実感した」とする一方、「その影響が十分に意識されていないのではないか」と課題を指摘した。一方、SNSの普及により複雑な問題が単純化されやすく、原子力のバックエンドに関しても極端な意見が拡散されやすい現状に言及し、「科学リテラシーの向上が重要」と強調した。
さらに、課題図書『情報パンデミック あなたを惑わすものの正体』の中で記された「科学的根拠に基づいた情報であっても自らの思いから外れると否定につながる」という一節が印象に残ったと述べ、これまでの経験と課題図書を通じて得た新たな気づきを整理し、「今後取り組むべき方向性が明確になった」と今回の作文コンクール入賞に伴う手応えを語った。
また、表彰式に同席していた同校の浅井佑記範教諭(受賞者の所属ゼミ担当教諭)は、世継さんの入賞について、「彼女の好奇心の強さと、さまざまな活動に主体的に取り組む姿勢」を評価した上で、「自身が深く熱心に携わってきたテーマだからこそ、課題図書を踏まえ、科学技術や社会の在り方を自分の言葉で深く考察できたのではないか」と語った。
そして、生徒の科学リテラシー向上に向けて意識して取り組んでいることとして、どんなテーマであっても、いずれの場合(立場の違い)も盲目的に受け入れるのではなく、「条件や前提を踏まえて考える姿勢が重要だ」と指摘。「多様な意見に目を向け、自分の頭で判断する力を身につけてほしい」と語った。





