原子力産業新聞

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東芝ESS、横浜国大他、神奈川県立施設を活用し重粒子線治療の高度化に向け共同研究を加速

12 Jun 2020

神奈川県の重粒子線治療施設「i-ROCK」(東芝ESS発表資料より引用)

東芝エネルギーシステムズ、横浜国立大学、神奈川県立病院機構は、重粒子線がん治療装置の高度化に向け共同研究を加速する。

東芝エネルギーシステムズでは、重粒子線がん治療のパイオニアである放射線医学総合研究所(量子科学技術研究開発機構)との共同開発により、あらゆる角度から重粒子線照射を可能とする「回転ガントリー」に超伝導電磁石技術を採用し、装置の小型・軽量化を図るなど、がん治療システムの研究開発に力を入れている。また、神奈川県立病院機構のがんセンターでは、国内で5番目の重粒子線治療施設「i-ROCK」が2015年に治療を開始。

3者が6月11日に発表したところによると、これまで、2017年度設立の共同研究講座により、放射線の照射量に応じて発色する材料と発色量の3次元分布を測定する技術の開発に至るなど、「i-ROCK」を活用しがん治療における課題解決に取り組んできた。今後は、その成果を踏まえ、重粒子線がん治療装置の高度化に向けて、4月に新たな枠組みのもと、横浜国大研究推進機構内に「東芝エネルギーシステムズ・神奈川県立病院機構 重粒子線がん治療装置共同研究講座」を開設。神奈川県立病院機構は実データや現場の具体的要望を横浜国大に提供し、東芝エネルギーシステムズは「i-ROCK」の設計・製造を一括で請け負った実績をもとに機器や制御の観点から研究を支援する。横浜国大における人工知能の研究なども応用し、より精度の高い照射技術の開発を目指す。

3Dプリントされた線量計、人形(上)をモデルに照射前(左下)に対し1kGyのX線照射後(右下)は青緑色の濃淡として照射部分が示されている(金沢工大発表資料より引用)

放射線治療においては、腫瘍周辺の正常組織に影響を及ぼさないよう綿密な照射計画を立てる必要がある。線量の3次元分布測定に関し、金沢工業大学他の研究グループがこのほど興味深い研究成果を発表している。放射線照射により発色する「ラジオクロミック」と呼ばれる材料を用い3Dプリンターで患者の臓器の形状を正確にコピーするオーダーメイドの「3次元線量計」で、放射線治療技術の進展に応じ線量分布が複雑化する中、正確で安全な放射線治療の提案に資することが期待される。

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