原子力産業新聞

国内NEWS

山形大東日本重粒子センターが年度内にも治療開始、国内7施設目

06 Oct 2020

山形大東日本重粒子センターの固定照射室(暖色系のアメニティ、山形大ホームページより引用)

山形大学医学部の東日本重粒子センターは2021年2~3月より、照射治療を開始する。前立腺がんの治療からスタートし、順次適用部位を広げていく計画。10月1日の学長定例会見で発表されたもので、同日より予約受付を始めている。前立腺がんの重粒子線治療は保険医療の対象となっており、放射線医学総合研究所(量子科学技術研究開発機構)によると、5年以内に再発しない確率は90%台に上っており、治療成績も良好だ。

同センターが整備する2つの照射室のうち、今回診療を開始するのは水平方向から腫瘍に照射する「固定照射室」で、既に紹介患者として最初に治療を施行する12名が決定しており、9月よりがんの進行を抑えるホルモン治療などの準備が行われている。山形大の発表によると、前立腺がんの重粒子線治療は、仰向けに寝た状態で数分程度の照射を1日1回、計12回、週4回のペースで3週間にわたり実施し、照射中に痛みや熱はまったく感じないという。

また、もう一つの照射室「回転ガントリー室」は、頭頚部、骨軟部、肝臓、すい臓などが対象で、2021年8月頃の照射治療開始を見込んでいる。山形大の重粒子線治療装置は、東芝との共同開発によるもので、治療台を傾けず回転体を回しどの角度からもピンポイントで病巣を集中して照射できる「回転ガントリー」を備えた治療室は、海外からも関心を集めている。

日本の重粒子線治療施設(量研機構発表資料より引用)

1994年に臨床試験を開始した放射線医学総合研究所から数え、国内の重粒子線がん治療施設は7施設目となり、東北・北海道地区では初となる。

〈特集記事「重粒子線がん治療最前線」もご覧下さい〉

cooperation