原子力産業新聞

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動力協会・桝本会長と電事連・池辺会長が対談

26 Mar 2021

対談する桝本氏(右)と池辺氏(オンライン中継)

日本動力協会による「エネルギートップ講演会」が3月23、24日、オンラインで開催された。同協会が電力、ガス、石油などのエネルギー関連業界団体トップを招き3年おきに実施しているもの。

24日には、電気事業連合会会長の池辺和弘氏が講演を行うとともに、動力協会会長の桝本晃章氏と対談した。池辺氏は、2050年カーボンニュートラル実現に向けた電力業界の取組として、(1)供給側の「電源の低・脱炭素化」、(2)需要側の「電化の推進」、(3)イノベーション・課題克服――を掲げ説明。12月に設置した電力各社社長による「2050年カーボンニュートラル実現推進委員会」で、今後、「社会の脱炭素化に貢献できる対策をしっかり議論していく」と述べた。また、同氏は、喫緊の課題として、新型コロナウイルス感染症への対応をあげ、「感染予防・拡大防止策を講じ、業界一丸となって日々緊張感を持ちながら、電力安定供給に万全を期している」と、電気事業者としての使命を改めて強調した。

対談に入り、桝本氏が電力安定供給に係る現場の努力に労いの言葉を述べたのに対し、池辺氏は、2020年に運用を開始した九州電力川内原子力発電所1、2号機のテロなどに備えた「特定重大事故等対処施設」(特重施設)設置工事を例示。感染症対策下、3,000~4,000人の作業員が従事する中、特重施設が完成に至ったことを振り返り、「もしここでクラスターが発生したら、10~20日にわたり工事が止まってしまう」と、電力安定供給に係る現場意識の重要性を再認識した上で、「今後も気を引き締めて取り組んでいく」との決意を表明した。

桝本氏は、昨今の報道による「再生可能エネルギーで電力供給がすべてまかなえる」といった誤解に危惧を示し、電圧や周波数などが安定した「電気の品質」の重要性からも、改めて「安定供給維持は電力マンの大きな仕事」と強調。

池辺氏は、今後の電力需要の見通しに関し、「人口は減少しても電化が進むにつれ増えていくと思う」と予測。電力供給サイドとして、原子力については「科学的・技術的には完成されており、安全性をより高めるよう努めていくが、世の中の皆様に理解してもらう努力が必要」などと述べた。再生可能エネルギーや火力の必要性と課題もあげ、すべての電源を最大限活用しても「2050年ではぎりぎり対応できるところ」との見通しを示した。

また、検討が進められているエネルギー基本計画見直しや2050年カーボンニュートラル実現に関し、池辺氏は、中国の習主席が2020年の国連総会で表明した「2060年カーボンニュートラル」に言及するなど、他国の脱炭素化に向けた躍進を示唆。将来に向けて「中国や米国などのビッグパワーの中で日本がどういう立ち位置にあるのか。どういうエネルギー構造が望ましいのか」を真剣に議論していく必要性を強調した。

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