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英国政府、サイズウェルC原子力発電所計画に17億ポンドの予算措置

01 Nov 2021

英国の伝統に則り、歳出計画案の入った赤鞄を記者団に示すスナク大臣 © HM Treasury

英国財務省のR.スナク大臣は10月27日、毎年一回秋に取りまとめている予算案の修正報告書と、2025年まで今後4年間の歳出計画案を発表した。

このなかで同大臣は、大型原子力発電所を少なくとも1つ建設する計画について、現政権の在任期間中に最終投資判断が下されるよう、費用対効果が高いことと関係承認が得られることを条件に、最大で17億ポンド(約2,656億円)を新たに歳出すると表明。現在ヒンクリーポイントC原子力発電所(160万~170万kWの欧州加圧水型炉:EPR×2基)を建設中のEDFエナジー社に対しては、イングランド南東部のサフォーク州でサイズウェルC原子力発電所(160万~170万kWの欧州加圧水型炉:EPR×2基)を新たに建設するため、昨年12月以降、積極的に交渉を進めている点を強調した。

折しも、英国政府のビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)は前日の26日、大型原子力発電所の新規建設を支援する資金調達の枠組みとして、「規制資産ベース(RAB)モデル」の導入を目指した「原子力資金調達法案」を立案したと発表した。

スナク財務大臣も今回の歳出計画案ではこのほか、B.ジョンソン首相が英国内の温室効果ガス(GHG)排出量を実質ゼロ化するため昨年11月に発表した「緑の産業革命に向けた10ポイント計画」に沿って、「排出量実質ゼロ化のための技術革新ポートフォリオ」に10億ポンド(約1,562億円)歳出すると表明。10ポイント計画では具体的に、販売間近の革新的な低炭素技術の開発を促進するとしている。また、小型モジュール炉(SMR)や先進的モジュール炉(AMR)など次世代原子炉技術の開発を支援するため、BEISが「CO2実質ゼロ化戦略」の中で投入を誓約していた「先進的原子力基金」の3億8500万ポンド(約599億円)についても、同様に調整したことを明らかにしている。

歳出計画案ではこれらに加えて、クリーンエネルギー社会の構築に向けたその他の方策として、輸送部門の脱炭素化計画の支援に61億ポンド(約9,530億円)を投入する計画である。CO2を排出しない電気自動車の台数を大幅に拡大しつつ、クリーンな航空機や船舶の開発を後押し。バスや自転車、徒歩による小旅行の実施も奨励するとしている。

このような予算案について、英国原子力産業協会(NIA)のT.グレイトレックス理事長は同日、歓迎の意向を表明。「原子力に対する信任投票のようなもので、将来的にSMRやAMRの建設を可能にするとともに、大型原子力発電所の建設計画についても投資を促進する歴史的一歩だ」と評価した。「実際、新たな原子力発電所への投資抜きで英国がCO2排出量を実質ゼロ化することは難しいし、英国政府は今回、クリーンエネルギー社会への移行で原子力が重要と考えていることを、投資家に対して明確に示した」と述べた。同理事長はまた、「この投資は一層グリーンな将来に向けた投資であるだけでなく、英国全土で雇用や専門技術を生み出すことになる」と指摘している。

(参照資料:英国政府NIAの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの10月28日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)

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