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ルーマニア、2028年までに米ニュースケール社製SMRの建設を計画

04 Nov 2021

ルーマニア大統領と米国大統領特使の会談 ©Președintele României

ルーマニアの大統領府は11月2日、同国のK.ヨハニス大統領と米国のJ.ケリー気候担当大統領特使による協議の結果、民生用原子力分野における米国との連携協力を通じて、ルーマニア初の小型モジュール炉(SMR)を2028年までに国内のエネルギー生産システムに含めると発表した。

同じ日に米ホワイトハウスも、クリーンエネルギー経済の構築に向けたJ.バイデン大統領の声明文を公表しており、その中で「米国とルーマニア両国は米国籍のニュースケール・パワー社が開発した最新技術のSMRをルーマニア国内で建設する方針である」と表明。ルーマニアの国営原子力発電会社(SNN)とニュースケール社は今後、出力7.7万kWの原子力モジュール6基で構成されるPWRタイプの一体型SMR「ニュースケール・パワー・モジュール(NPM)」を建設するため、商業契約を結ぶことになる。

ヨハニス大統領とケリー特使の会談は、英国グラスゴーにおける国連気候変動枠組条約・締約国会議(COP)に合わせて開催された。ルーマニア大統領府によると、地球温暖化との闘いは両国がともに最優先事項としている課題であり、両者は主に低炭素なエネルギー技術の開発と機器の製造、活用に関わる協力について協議。原子力と再生可能エネルギーの2分野における二国間協力の強化に加えて、エネルギーの貯蔵や輸送部門の電化などを話し合った。

同大統領府はまた、エネルギーの生産システムから排出されるCO2を削減するため、両国は今回、互いに協力する具体的一歩を刻んだと指摘。ルーマニアは米国製のSMR建設での協力により、SMR技術のバリューチェーンを活用してルーマニア国内でのSMR製造に参加することを希望。その他の国においてもSMRが建設・運転されるよう、関係する支援や人的資源開発の準備を行いたいとしている。

一方のホワイトハウスは、今回の連携協力によってSMR技術がルーマニアにもたらされるだけでなく、世界のSMR開発レースで米国の技術が一歩先んじることになると表明。ニュースケール社が締結する商業契約ではNPMがルーマニアで建設されることは、両国内で3千人~3万人規模の雇用を創出する可能性があり、発電部門の脱炭素化、およびCO2排出量が実質ゼロの未来にも大きく貢献すると指摘した。

なお、ニュースケール社も同日にSNN社との共同声明で、ルーマニアでクリーンなエネルギー技術を発展させるため、両社が一致団結して協力していく考えを表明している。ニュースケール社はすでに2019年、ルーマニアにおける同社製SMRの建設可能性を探るため、SNN社と了解覚書を締結している。2020年8月には、モジュール1基あたりの出力が5万kWの「NPM」について、SMRとしては米国内で唯一、原子力規制委員会(NRC)から「標準設計承認(SDA)」を取得した。SMR技術のサプライチェーン開発や設計の標準化、SMR発電所の搬入から起動に至るまでの計画立案など、ニュースケール社がSMRの商業化を目指して強力な推進力を備えている点を強調した。

(参照資料:ルーマニア大統領府(ルーマニア語)米大統領府ニュースケール社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの11月3日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)

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