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米ニュースケール社、SMRの商業化加速で特別買収目的企業と合併

15 Dec 2021

©NuScale

米国のニュースケール・パワー社は12月14日、同社製の小型モジュール炉(SMR)「ニュースケール・パワー・モジュール(NPM)」の商業化を加速するため、特別買収目的企業(*未公開会社の買収を目的として設立される法人=SPAC)のスプリング・バレー社(Spring Valley Acquisition Corp.)と企業合併契約を締結したと発表した。合併後の新会社は、証券取引所に株式を公開する予定。低炭素で安全、かつ出力の設定が可能なSMRを通じて、世界中が低炭素なエネルギー社会に移行するのを支援していくとしている。

ニュースケール社の大株主は大手EPC(設計・調達・建設)契約企業のフルアー社であり、これまでは出資者が提供額の範囲内で経営責任を負うという「合同会社(LLC)」の形態を取ってきた。米国で承認されているSPAC制度では、特定の事業を持たないSPACの設立者が、まず自己資本によりSPACの株式を上場。投資家から資金を集めた後に買収企業を探して合併するが、事業を営んでいる被買収企業の方が上場企業として存続することになる。

合併により、まったく新しいエネルギー企業となるニュースケール社は、社名の末尾が「LLC」から「Corporation」に変わり、上場時の証券コードは「SMR」となる。事前に見積もられた企業価値は約19億ドルにのぼり、年間に最大4億1,300万ドルの売上総利益を生むと予想されている。フルアー社は合併後も新会社の支配権の約60%を確保し、ニュースケール社の重要パートナーとして、今後もエンジニアリングサービスやプロジェクト管理、サプライチェーン、経営面のサポートを提供していく。

ニュースケール社が開発したNPMはPWRタイプの一体型SMRで、電気出力が最大7.7万kWのモジュールを12基まで連結することで出力調整することができる。同社は今月2日、同モジュールを搭載したSMR発電所の呼称を「VOYGR」に決定しており、搭載基数に応じて出力92.4万kWの「VOYGR-12」、46.2万kWの「VOYGR-6」、30.8万kWの「VOYGR-4」と定めた。米国の原子力規制委員会(NRC)は2020年9月にモジュール1基の出力が5万kWのNPMに対し、SMRとしては初めて「標準設計承認(SDA)」を発給。ニュースケール社は出力7.7万kW版のモジュールについても、SDAを2022年第4四半期に申請する予定である。

ニュースケール社によると、2050年までにCO2の排出量を実質ゼロ化するには、原子力が重要な役割を果たすと広く認識されており、米国は2035年までに発電部門からのCO2排出量をゼロ化する方針。こうした動きに対し、SMR開発の先駆者である同社は多方面で大きな役割を担える立場にあり、大規模な市場機会に恵まれるとともに、米国その他の国々からは超党派の支援を得ている。

産業アナリストの分析によると、2040年までに世界では新たに160億kW以上の無炭素電源設備を必要としており、同社は最初の顧客であるユタ州公営共同電力事業体(UAMPS)と協力して、2029年にもエネルギー省(DOE)傘下のアイダホ国立研究所でVOYGRの建設を目指している。米国以外の国々からも同社製SMRへの期待は高まっており、これまでに11か国で19件の了解覚書や契約をSMRの建設に向けて結んだことを明らかにしている。

(参照資料:ニュースケール社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの12月14日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)

 

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