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世界で4基目の中国製「華龍一号」がパキスタンで臨界条件達成

24 Feb 2022

カラチ原子力発電所 ©CNNC

中国核工業集団公司(CNNC)は2月23日、中国が知的財産権を保有する第3世代の100万kW級PWR設計「華龍一号」を採用した世界で4基目の原子炉が、パキスタンのカラチ原子力発電所3号機(K-3)(PWR、110万kW)として21日に臨界条件を達成したと発表した。

カラチ原子力発電所では2、3号機に「華龍一号」設計を採用しており、両炉は海外における同設計の実証炉プロジェクトと位置付けられている。それぞれ2015年8月と2016年5月に本格着工した後、2号機(K-2)は2021年5月に中国国外初の「華龍一号」として営業運転を開始、3号機も昨年秋に温態機能試験を完了していた。

中国国内では、福清原子力発電所5、6号機(各115万kW)がCNNC版「華龍一号」の実証炉プロジェクトという位置づけになっており、5号機はすでに2021年1月、世界初の「華龍一号」実証炉として営業運転を開始、6号機も今年1月に国内送電網に接続されている。

「華龍一号」はCNNCと中国広核集団有限公司(CGN)双方の第3世代炉設計を一本化して開発したもので、CGN版「華龍一号」の実証炉も2015年以降、防城港3、4号機として広西省で建設中。これらに続く「華龍一号」も、双方がすでに4基ずつ建設中となっている。革新的な技術を数多く炉心設計に採用しており、安全系には静的と動的2つのシステムを組み合わせている。また、運転サイクル期間は18か月で、設計耐用期間は60年間となっている。

カラチ3号機が初めて臨界条件を達成したことについて、CNNCは「今後の送電網への接続と運転開始に向けて盤石な基礎が築かれた」と評価した。2、3号機の建設プロジェクトは、中国とパキスタン両国の包括的で戦略的な協力関係を深めるだけでなく、共通の未来を分かち合うコミュニティの構築と中国が推進する広域経済圏構想「一帯一路」を一層推し進めるものだと指摘。同構想に参加する国々で原子力およびその他のエネルギー源の活用を促し、国民生活の質や環境を向上させていきたいと述べた。

CNNCによると、「華龍一号」1基で約90億kWhの発電が可能であり、年間で約400万世帯の電力需要を満たすことができる。また、標準炭換算では年間で312万トンの燃焼が抑えられ、CO2排出量を年間816万トン削減することにつながる。パキスタンにおいてはエネルギー供給構造の大幅な改善で重要な役割を担うとしており、今や世界的目標の一つでもあるCO2排出量の削減と、同排出量の実質ゼロ化を実現する一助にもなると指摘している。

パキスタンでは慢性的な電力不足に悩んでいるため、同国政府は2050年までに約4,000万kWの原子力発電設備開発を目標に掲げている。しかし、同国初の商業炉として1970年代にカナダから加圧重水炉のカラチ1号機(13.7万kW)を導入したが、核不拡散条約(NPT)に未加盟な同国に欧米諸国からの支援は得られていない。同炉は50年間稼働した後、昨年8月に永久閉鎖されたが、2基目以降の建設については中国が技術と資金の両面で20年以上にわたって協力中。チャシュマ原子力発電所ではすでに、中国が供給した30万kW級PWRが4基稼働しているほか、「華龍一号」としてはカラチ2、3号機に加えて、チャシュマ5号機を建設する計画もある。

(参照資料:CNNCの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月23日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)

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