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フィンランド・ハンヒキビ1号機建設計画の参加自治体が撤退を表明

30 Mar 2022

建設サイトに立てられた管理棟(2022年2月) ©Fennovoima

フィンランド中西部のピュハヨキでは、フェンノボイマ社がハンヒキビ原子力発電所1号機建設計画(120万kWのロシア型PWR)を進めているが、これに一部出資しているヘルシンキ郡のバンター市は3月28日、市議会でプロジェクトからの撤退を決めたと発表した。

同プロジェクトでは2013年、フェンノボイマ社に対し34%の出資を約束したロシア国営の原子力総合企業ロスアトム社が建設工事を受注。残りの66%は、国内の電力多消費企業約60社で構成されるボイマ・オサケイティエ・グループが出資している。

バンター市は傘下のエネルギー企業「バンター・エネルギア社」を通じて、ボイマ・オサケイティエ・グループに約5%出資中だが、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻にともない保有株式を売却する判断を下したもの。この決定に基づき、同市はバンター・エネルギア社の同プロジェクトからの撤退を早急に促す。また、2015年からプロジェクトの建設許可申請書を審査しているフィンランド政府に対しては、一刻も早くこの問題を解決するよう要請し、公的資金が同プロジェクトで不適切に使われるのを防ぎたいとしている。

なお、フィンランドの南西部に位置するトゥルク市も、同プロジェクトからの撤退を検討している模様。同市は傘下に保有するトゥルク・エネルギア社を通じて、ボイマ・オサケイティエ・グループに約4%出資している。

今回のバンター市の発表によると、「軍事侵攻に端を発した国際情勢はますます緊迫化しており、プロジェクトの実施は不透明になった。バンター・エネルギア社は、プロジェクトが頓挫した場合の財政面や法制面のリスクを最小限にするため、あらゆる手段を講じるべきである。また、ロシアと国境を接するフィンランドの安全保障、およびフィンランド政府の声明や、政府と欧州連合によるロシアへの制裁表明などを照らし合わせると、同プロジェクトで建設許可を取得するのは最早、不可能と思われる。」このような状況から、撤退判断を下すに至ったと説明している。

バンター・エネルギア社はすでに、同プロジェクトに3,960万ユーロ(約53億7,000万円)を投資しており、計画している総投資額は最大で9,000万ユーロ(約122億円)にのぼる見通しである。同社がプロジェクトから一方的に撤退するには、保有するボイマ・オサケイティエ・グループ株を売却するしか方法はないが、現時点では売却先が見つからないとバンター市は指摘。これに代わる方法としては、フェンノボイマ社の株主が全会一致でプロジェクトの中止を決めることのほか、フィンランド政府や国際的な規制、あるいは制裁等に基づく中止決定などが考えられるとしている。

一方のフェンノボイマ社は3月15日、ウクライナ情勢に関して声明文を発表していた。同社はその中で、「国際社会がロシアに科した一連の制裁措置に原子力部門は含まれないと考えていたが、最近決まった制裁事項はハンヒキビ計画にも影響を及ぼすと思われる」とした。

その上で、「当社は社内の従業員も含めたプロジェクト関係者と様々な契約や誓約を交わしており、制裁措置や法的拘束力のある決定によってこの枠組が変わらない限り、当社の職務や法的義務も変わらない」と明言。当面の間は、関係するすべてのステークホルダーと緊密に連絡を取りながら、状況の推移を注意深く見守っていくと述べた。また、「ウクライナの状況は誠に悲しむべきものであり、軍事侵攻を受けた人々の中には当社の従業員と親しい人も多くいるが、現時点ではこれ以上コメントすることはできない」としている。

(参照資料:バンター市(フィンランド語)フェンノボイマ社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、ほか)

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