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チェコ電力、同国初のSMR立地点としてテメリン原子力発電所を選択

04 Apr 2022

テメリン原子力発電所 ©CEZ

チェコの国営電力(CEZ)は3月31日、国内で建設を検討している小型モジュール炉(SMR)初号機の立地点として、南ボヘミア州にあるテメリン原子力発電所(100万kW級のロシア型PWR=VVER×2基)敷地内の一区画を確保したと発表した。

同社はSMR建設の実行可能性を調査するため、数年前に米国のニュースケール・パワー社やGE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社などと協力覚書を締結。今回の決定については、米エネルギー省(DOE)の原子力通商ミッションが3月28日の週にプラハを訪問した際、CEZ社が両社の代表団と会談して伝えた。同社はまた、南ボヘミア州政府、同様にSMRで協力中の米ホルテック・インターナショナル社に対しても同日、この件を連絡したとしている。

CEZ社はこれらのほかに、SMRデベロッパーの英ロールス・ロイス社、フランス電力(EdF)、韓国水力・原子力会社(KHNP)とも、個別に協力覚書を締結済みである。CEZ社自身もまた、傘下の国立原子力研究機関(UJV Rez)を通じてSMR開発を進めており、モジュール式の先進的ガス冷却高速炉「HeFASTo」の概念や、溶融塩で冷却する小型のモジュール式高温原子炉「Energy Well」の概念については、研究開発が新たな段階に進展したとしている。

チェコ政府は2015年5月の「国家エネルギー戦略」のなかで、当時約30%だった原子力発電シェアを2040年には60%まで引き上げる必要があると明記した。同戦略のフォロー計画として翌月に閣議決定した「原子力発電に関する国家アクション計画(NAP)」では、化石燃料の発電シェアを徐々に削減するのにともない、既存のドコバニとテメリンの両原子力発電所で1基ずつ、可能であれば2基ずつ増設するための準備が必要だとしていた。

ドコバニ発電所では特に、既存の全4基(51万kWのVVER×4基)が2035年から2037年の間に運転を終了する予定であるため、チェコ政府は優先的に原子炉を増設する方針。CEZ社は3月中旬、Ⅱ期工事の5、6号機(各120万kW級PWR)建設に向け、最初の1基のサプライヤーについて競争入札を開始している。テメリン発電所でも一時期、増設計画が進められていたが、投資金の回収問題により2014年にこの計画は頓挫。チェコのA.バビシュ首相は2019年11月、チェコでは差し当たりドコバニ発電所の増設を優先するものの、テメリン発電所の増設計画についてもいずれ協議を再開することになると強調している。

CEZ社によると、安定した岩盤上に立地するテメリン発電所では、運転員が2000年代初頭から安全運転で豊富に経験を蓄積するなど、SMRの立地では大きな利点がある。複数のデベロッパーや地元自治体が関与するSMRのパイロット計画立地点として同発電所が選定されたのも、そのような理由によるとしている。

テメリン発電所サイトでSMR用に一区画を確保したことに関し、CEZ社は将来、標準的な大型原子炉を2基増設する計画に影響が及ぶことはないと指摘。CEZ社のD.ベネシュCEOも、「ドコバニ発電所で5号機を増設するための入札では、これに加えてテメリンで2基増設することも強制力を持たない入札オプションの一つになっている」と説明した。

(参照資料:CEZ社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの4月1日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)

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