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仏製SMR「NUWARD」の概念設計調査をトラクテベル社が実施

10 May 2022

「NUWARD」プラントの完成予想図 ©EDF

ベルギーの大手エンジニアリング・コンサルティング企業であるトラクテベル社は5月6日、フランス電力(EDF)が原子力・代替エネルギー庁(CEA)などと協力して開発している小型モジュール炉(SMR)「NUWARD」の建設を支援するため、概念設計調査を実施すると発表した。

2030年からEDFが「NUWARD」実証プラントの建設に取り掛かる計画であるため、トラクテベル社は今回、フランス中部のトゥールにあるEDFのエンジニアリング・センター(CNEPE)と契約を締結。SMR関係のエンジニアリング・サービスを提供して欧州初のSMR建設をサポートするほか、EDFらが「NUWARD」等の建設を通じて目指している「2050年までのCO2排出量の実質ゼロ化」や、安全で安価な電力供給にも貢献したいとしている。

トラクテベル社はこれまでに、ベルギーで稼働する原子炉7基中6基の建設でアーキテクト・エンジニアを務めたほか、世界中の多様な原子力開発プロジェクトにおいてもエンジニアリング企業として活動。2020年12月にはSMRに関する同社の将来展望を公表し、SMR事業をエネルギー問題の総合的解決策として重点的に推進していく方針を表明している。

一方のEDFは2019年9月、CEAおよび戦略的下請け企業である政府系造船企業のネイバル・グループ、小型炉専門開発企業のテクニカトム(TechnicAtome)社とともに、フランスで50年以上の経験が蓄積された最高レベルのPWR技術に基づく「NUWARD」を発表した。出力17万kWの小型PWR×2基で構成される「NUWARD」プラントの合計出力は34万kWで、高圧の送電網が届かない遠隔地域の需要に応えるほか、間欠性のある再生可能エネルギー源を補完。EDFが主導するNUWARD企業連合にはフラマトム社も加わっており、2020年代後半にも競争力を備えたソリューションとして「NUWARD」を世界市場に送り出す方針である。

トラクテベル社が今回、EDFと締結した契約は今年の10月まで有効で、同社のエンジニアはすでに複数の設計オプションに関して技術面や経済面の調査を実施した。またこの契約に基づき、取水口やサービス・システム等の補助的周辺機器やタービン系の一部、およびこれらのシステムを格納する建屋の3Dモデリング等について概念設計調査を実施する。さらに、入手したデータが複数のパートナー企業間で明確かつ適時に共有されるよう、同社の専門家がパートナー企業間の連絡管理も行う方針。同社はこのほか、予備的な土木調査やコスト評価についても責任を負うことになっており、「NUWARD」プロジェクトに参加するその他のパートナー企業と連携して、サイトのレイアウト設計図も作成する考えだ。

なお同プロジェクトでは、概念設計段階に続いて2023年から基本設計段階に入るため、トラクテベル社はこの段階でもEDFをサポートできるよう方策を手配中。その中でも特に、システム調査や土木・レイアウト設計に関する調査、および電気関係や許認可関係の調査を行いたいとしている。

(参照資料:トラクテベル社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの5月9日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)

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