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チェコのSMR初号機建設で「南ボヘミア原子力パーク」プロジェクトが始動

03 Jun 2022

3者による覚書への調印 © UJV Rez

チェコの国営電力(CEZ社)と傘下の国立原子力研究機関(UJV Rez)、およびCEZ社のテメリン原子力発電所が立地する南ボヘミア州の州政府は5月30日、同国初の小型モジュール炉(SMR)建設計画を加速する3者の共同プロジェクトとして、「南ボヘミア原子力パーク」を始動すると発表した。同プロジェクトにより、SMR関係の研究開発と建設準備を共同で進める方針で、3者はこの日、同パークの設立覚書に調印している。

CEZ社は今年の3月末、計画しているSMR初号機の建設サイトとしてテメリン発電所敷地内の一区画を確保した。建設するSMR設計はまだ決定しておらず、CEZ社等のCEZグループはこれまでに、SMRを開発している米国のニュースケール・パワー社やGE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社、ホルテック・インターナショナル社のほか、英国のロールス・ロイス社、フランス電力(EDF)、韓国水力・原子力会社(KHNP)などと個別に協力覚書を締結している。

今回このCEZ社の建設計画に、様々な研究インフラを保有するUJV Rezが加わったもので、UJV Rezが現在進めているモジュール式先進的ガス冷却高速炉「HeFASTo」や、溶融塩で冷却する小型のモジュール式高温原子炉「Energy Well」の概念研究は、先進的レベルと言われている。

「南ボヘミア原子力パーク」プロジェクトでは具体的なタスクとして、SMR建設にともなう技術面や財政面の実行可能性評価のほか、官民および学術界との連携、許認可手続きの準備などが含まれる。CEZ社はプロジェクトの始動に際し、「当社は原子力分野では欧州におけるリーダーの一人であり、今後もその立場を維持する方針だ」と表明。原子力の持つ高い安全性と低い価格の重要性を強く認識しているからこそ、SMRの建設においても大きな役割を果たしていきたいと述べた。

一方、大型炉開発に関しては、CEZ社は2015年5月の「国家エネルギー戦略」と、これをフォローする「原子力発電に関する国家アクション計画」に基づき、ドコバニ原子力発電所で最大120万kWの原子炉を2基増設することを計画。CEZグループのドコバニⅡ原子力発電会社(EDUⅡ)は2020年3月、プラント供給企業の選定や建設工事の実施に先立つ準備手続として、同計画の立地許可を申請した。原子力安全庁(SUJB)は2021年3月にこの許可を発給しており、EDUⅡ社は今年3月、最初の1基についてサプライヤーの競争入札を開始している。

CEZ社によると、SMRの建設計画を加速しても、これらの大型炉開発が妨げられることはない。SMR建設は並行的に進める計画であり、SMRは既存の石炭火力発電所のリプレースに適した設備になる。

南ボヘミア州のM.クバ知事は今回のプロジェクトについて、「もちろん州民の安全確保が最も重要だが、途方もなく大きなチャンスでもあり当州はSMR建設のリーダーになりたい」と表明。世界中から専門家が訪れ、国内企業が機器の開発・製造に携わる中心地とするほか、新しい原子力発電所の運転員訓練センターも誘致したいとの抱負を述べた。

(参照資料:UJV Rez(チェコ語)南ボヘミア州政府の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの6月1日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)

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