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米規制委、ホルテック社の中間貯蔵施設建設に関する環境影響評価を完了

19 Jul 2022

地下式の「HI-STORM UMAX」 ©Holtec International, Inc.

米原子力規制委員会(NRC)のスタッフは7月13日、ホルテック・インターナショナル社がニューメキシコ(NM)州南東部で進めている使用済燃料集中中間貯蔵施設(CISF)の建設と操業に関する申請について、環境影響評価を完了したと発表した。

同施設の環境影響声明書・最終版(FEIS)を発行したもので、その中で建設・操業許可の発給を妨げるような環境や周辺住民への悪影響はないと結論付けた。NRCスタッフは今後、同施設の安全面に関する評価報告書を来年1月に完成させる方針で、こちらでも問題がなかった場合、NRCの委員らはホルテック社に対し同施設の建設・操業許可を発給すべきだと勧告している。

ホルテック社の計画では、NM州のエディ郡と同郡内のカールズバッド市、およびその東側に隣接するリー郡と同郡内のホッブス市が設立した有限責任会社「エディ・リー・エネルギー同盟(ELEA)」と結んだ協力覚書に基づき、ホルテック社はELEAがリー郡内で共同保有する敷地内に同社製の乾式地下貯蔵システム「HI-STORE CISF」を建設、最終処分場が米国内で利用可能になるまで操業する。同社によると、CISFでは米国内の二か所で建設した貯蔵システム「HI-STORM UMAX」や、ウクライナで同社が近年完成させた貯蔵システムの経験が生かされている。

CISF建設の最初の段階で、同社はまず約8,680トンの使用済燃料を封入した専用キャニスター500基を同施設で貯蔵。その後の19段階で、最終的に貯蔵するキャニスターの数は最大10,000基を想定している。これらのキャニスターには、全米で稼働中か廃止措置中、あるいは廃止措置が完了した商業用原子力発電所で貯蔵されている使用済燃料が封入され、列車でCISFまで輸送される予定である。

ホルテック社は2017年3月にCISFの建設・操業許可申請書をNRCに提出しており、NRCはその約1年後にこれを正式に受理した。審査では、CISFの建設から廃止措置に至るまで全20段階をカバーした環境影響を評価しており、具体的には、土地の利用や輸送、地質と土壌、地表水と地下水、生態学的資源や歴史的・文化的資源、および環境正義などの分野でCISFの影響を調査した。 

これらの結果に基づき、NRCは2020年3月に「環境影響声明書(EIS)」の案文を公表しており、この段階ですでに、同施設の環境影響に問題はないと表明。同案文をパブリック・コメントに付して、国民や様々なステークホルダーから意見を募集したほか、同案文を説明するオンラインの公開会合も6回開催した。その結果、4,800件以上の意見書がNRCに提出されるとともに、個人から3,718件のコメントが寄せられており、FEIS作成にはこれらの意見も反映されている。

NRCは当初、建設・操業許可発給の最終判断を2022年1月に発表する予定だったが、新型コロナウイルスによる感染の世界的拡大にともない、パブコメ期間を延長するなどの措置が取られた。ELEAのJ.ヒートン副会長はFEISの発行について「ELEAとホルテック社、およびNM州南東部のコミュニティにとって最高の日になった」とコメント。「CISFは我々コミュニティの経済を多様化し、350名分の新規雇用と30億ドル規模の投資をもたらす可能性がある」と指摘している。

米国ではこのほか、放射性廃棄物の処理・処分専門業者であるウェイスト・コントロール・スペシャリスツ(WCS)社と仏オラノ社の米国法人が立ち上げた合弁事業体「中間貯蔵パートナーズ(ISP)社」が、テキサス州アンドリュース郡で使用済燃料の中間貯蔵施設建設を計画。NRCは同社の申請に対し、2021年9月に建設・操業許可を発給済みである。

(参照資料:NRCホルテック社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの7月14日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)

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