原子力産業新聞

海外NEWS

英政府、サイズウェルC建設計画にDCO発給

22 Jul 2022

サイズウェルC原子力発電所の完成予想図 ©EDF Energy

英国イングランド南東部のサフォーク州でEDFエナジー社が計画しているサイズウェルC(SZC)原子力発電所(約167万kWの英国版欧州加圧水型炉:UK-EPR×2基)建設プロジェクトに対し、ビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)のK.クワルテング大臣は7月20日、「開発合意書(DCO)」の発給を決定した。

DCOは国家的重要度の高いインフラ設備の建設・操業プロジェクトで取得が義務付けられている主要認可で、原子力発電所の新規建設で必要とされる最終的な手続き。英国政府は先月、SZC建設計画では「規制資産ベース(RAB)モデル」による資金調達が適していると発表するなど、EDFエナジー社と資金調達関連の交渉を継続中だが、DCO発給を受けた同社は「すべてがうまく行けば、2023年にもSZC建設計画で最終投資判断(FID)を下す」と表明している。

EDFエナジー社の下でSZC計画を担当する子会社の「NNB Generation (SZC)社」は2020年5月、計画法(2008年制定)に基づいて、DCOの申請書を計画審査庁(PI)に提出した。5名の審査官で構成されるPIの審査当局(ExA)は2021年4月から10月にかけてこの申請書を審査し、今年2月にExAとしての結論と勧告を報告書にまとめてBEIS大臣に提出している。BEIS大臣は今回、同報告書およびその他の関係文書を熟慮した上で、「この建設計画には非常に高い緊急性と必要性があり、それは同計画がもたらす損失可能性を大きく上回る」と指摘、この点を踏まえてDCOを発給すべきだと結論付けている。 

EDFエナジー社の発表によると、DCOを申請した際にNNB Generation (SZC)社は、SZC発電所の建設が地元コミュニティに及ぼす影響を最小限にとどめる方策と、恩恵を最大限もたらす方策を申請書に盛り込んだ。これについては、審査期間中に1,000人以上の関係者や諮問当局が根拠を提示してくれたとEDFエナジー社は指摘。また、2012年に地元サフォーク州で始まった合計4回の公開協議では、同州東部の住民1万人以上が関わったとしている。

DCOの発給決定について、NNB Generation (SZC)社のC.ビンス最高企画責任者は「当社の提案を政府が全面的に支持したことを示すもので、サイズウェルC原子力発電所は必ず地元の事業や住民に様々なチャンスをもたらすとともに、サフォーク州が誇れるようなものを後に残すはずだ」と表明。同発電所はまた、CO2排出量を実質ゼロ化に導く英国最大規模のインフラ設備になるだけでなく、約600万戸の世帯に低炭素で信頼性の高い電力を供給。火力発電所を代替することで、同発電所によるCO2排出抑制量は年間約900万トンになると指摘している。 

英国原子力産業協会(NIA)のT.グレイトレックス理事長は同日、「英国におけるエネルギー供給保証の強化とCO2排出量の実質ゼロ化に向けて、非常に大きな一歩になった」と表明。サイズウェルC原子力発電所は今後80年以上にわたり無炭素な電力を安定的に供給するほか、天然ガスの使用量を削減し高サラリーの雇用を数千人規模で創出、英国全土で投資や事業の機会を長期的に提供していくとした。また、同発電所の建設が認められたことで、英国では今後原子力発電所を新たに建設していくための道筋が格段に強化されたと指摘している。

(参照資料:英国政府EDFエナジー社NIAの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの7月20日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)

cooperation