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ポーランド 大型炉3基にAP1000を採用

04 Nov 2022

記者会見するA. モスクヴァ気候環境相
©Polish Government

ポーランド政府は11月2日、大型原子炉を備えた最初の発電所として、米ウェスチングハウス(WH)社が開発した第3世代+(プラス)の加圧水型炉「AP1000」を建設することを承認したと発表した。気候環境大臣が提出していた決議を内閣が正式に承認したもので、この承認と同時に同決議は発効している。

同国の改訂版「原子力開発計画(PPEJ)」では、2043年までに複数サイトで100万kW級の原子炉を最大6基、合計600万~900万kW建設することになっており、政府は今回、このうちの最初の3基、375万kWに安全で実証済みの技術を用いたAP1000を採用すると表明。原子力発電所の建設に最適の地点として昨年12月に選定した北部のルビアトボ-コパリノ・サイトで、2026年にも初号機の建設工事を開始し2033年の完成を目指す。

これによりポーランドは、エネルギー供給保証の基盤として新たな電源を確保しつつ、エネルギー・ミックスの多様化を図り、電力価格を低い水準で安定させるとともに、発電部門におけるCO2の排出量を削減。クリーンで安全な原子力発電所の建設に向けた新たな産業部門を、国内経済にもたらしたいとしている。

ポーランドにとって、エネルギーを恒久的に自給しロシア産のエネルギーから脱却する上で、国内最初の原子力発電所建設に向けた投資を加速することは非常に重要である。そのため、原子力発電所の建設計画は長年にわたって、同国のエネルギー部門における重要課題の一つとなっている。

政府のPPEJについては、WH社のほかにフランス電力(EDF)と韓国水力・原子力会社(KHNP)がそれぞれの原子炉を提案。韓国政府とKHNP社は先月末、PPEJを補完する計画として、ポーランド中央部のポントヌフ地域で韓国製「改良型加圧水型炉(APR1400)」(出力140万kW)建設の実現を目指し、ポーランド政府との協力に向けた覚書、および同国企業との協力意向書を締結した。

一方、WH社は9月12日、ポーランドと米国の両国政府が2020年10月に締結した「(ポーランドの)民生用原子力発電プログラムに関する政府間協定(IGA)」に基づいて、大型炉建設のロードマップとなる「民生用原子力分野における両国間協力の概念と計画に関する報告書」をポーランド気候環境省に提出。その中で、WH社がポーランドの計画にAP1000を提供する方針であること、米国政府の融資機関である米輸出入銀行(US EXIM)や国際開発金融公社(DFC)が同計画に融資を行う可能性があることを示していた。

今回ポーランド内閣が承認した決議では、WH社のこの報告書の提案に同意することになり、明示されているそれぞれの基本的義務事項を双方が履行する。具体的には関係する企業を支援するとともに、政府レベルでも規制やスタッフの訓練といった活動や、サプライチェーンの構築や一般国民の理解を求めるキャンペーン等を実施していくことになった。

ポーランド政府は今回、エネルギー部門の重要課題を解決するための方策として、AP1000の初号機を2033年までに完成させることを挙げたほか、国内2つ目の原子力発電所を建設する準備を進めるため、速やかに対策を講じるとした。また、現在主流となっている化石燃料発電を低炭素な電源に取り換えるほか、電力需要を満たしつつ送電網の安定を図るため、分散型の再生可能エネルギーを大規模に導入するとした。さらに天然ガスの役割については、再エネの不安定な供給量を補完する移行期の燃料に限定するとしている。

2つ目の原子力発電所の建設準備については、気候環境省のA. モスクヴァ大臣が記者会見の席上、「欧州その他の国の企業とも協力する余地が残されている」と発表。内閣の意向として、現段階では採用炉型の決定を待たずに建設準備を加速することを明らかにしている。

なお、WH社は同じく2日付でコメントを発表しており、「ポーランドと当社にとって歴史的な日になった」と表明。ポーランドの建設計画については、AP1000設計の採用を前提に同社は今年1月、同国の関係企業10社と戦略的連携関係を結ぶことで合意したほか、9月にはさらに22社の同国企業と、ポーランドおよびその他の中欧地域におけるAP1000建設への協力を取り付けるため、了解覚書を締結したと改めて表明している。

(参照資料:ポーランド政府の発表資料(ポーランド語)ウェスチングハウス社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの11月3日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)

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