原子力産業新聞

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ウクライナ 米ホルテックとSMR導入などで協定

02 May 2024

桜井久子

エネルゴアトムのコティンCEO代行(右上)と
ホルテックのシンCEO(右下) ©Energoatom

ウクライナの原子力発電会社「エネルゴアトム」社と米ホルテック・インターナショナル社は412日、ウクライナへの小型モジュール炉(SMR)導入などに関する基本協定(Master Agreement)に調印した。同協定には、SMRのコンポーネント製造分野でのウクライナへの技術移転条項や、同国での使用済み燃料乾式貯蔵・輸送システム製造施設建設なども盛り込まれている。

協定は、エネルゴアトム社のP.コティンCEO代行とホルテック社のC.シン社長兼CEOによって、ウクライナのG.ガルシェンコ・エネルギー大臣と駐ウクライナ米大使館エネルギーアタッシェのS.アンダーソン氏の立会いのもと、オンラインで調印された。

協定は、ウクライナにおけるホルテック社製SMR-300PWR30kWe)の導入を推進するとともに、原子力発電所が支障なく運転できるよう、ホルテック社との契約(2005年)によりチョルノービリ立入禁止区域に建設された集中使用済み燃料貯蔵施設(CSFSF)の操業支援を目的としている。

今後、協定に従い、作業部会を設置、包括的な実施計画に基づき、技術面などで必要な作業を進める。

ガルシェンコ・エネルギー大臣は、「原子力分野の国内製造能力を確立し、ウクライナのエネルギー安全保障に貢献するだけでなく、ウクライナが原子力分野におけるグローバルリーダーとなり近隣諸国のニーズに応えていきたい。基本協定の締結により、ウクライナはSMRの製造、輸出、人材育成のほか、使用済み燃料管理技術の地域ハブとなり、経済発展と雇用創出、脱炭素化とグリーンエネルギーの促進を目指す」と抱負を語る。

エネルゴアトム社のコティンCEO代行は、「戦禍の中、国の防衛と経済を含むあらゆる場面でウクライナの主権を確保するには、我々の原子力発電所の安全かつ信頼性のある運転継続が不可欠である。エネルゴアトムは、エネルギーの独立と安定したエネルギー供給に向けて、先進技術を用いたクリーンエネルギー分野でリーダーシップを発揮することを目指している。ロシアの攻撃を受けて殆どの化石燃料の発電所が損傷し、原子力部門は国の電力需要の75%以上をまかなわなければならずこれまで以上に先進技術が必要になる。先進技術と最先端の製造施設は戦後の経済復興にとって極めて重要である」として戦後を見据えた基本協定の締結の意義を強調した。

2023年4月、エネルゴアトム社とホルテック社は、最大20基のSMRをウクライナへ導入するとした協力協定を締結した。ホルテック社によると2011年から開発中のSMRは設計上の進化を遂げ、最新のものがSMR-300となる。SMR-300はプロセス熱用途をもち、SMR-160同様に事故時に運転員が現場を離れても安全性が保たれる特性(walk-away safe)を維持している。

なお、両社は202311月、米国で製造する使用済み燃料貯蔵キャスクの製造施設をウクライナに建設する計画を発表していた。

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