デンマーク 40年禁止してきた原子力発電利用を検討へ
20 May 2025
デンマーク議会は5月15日、デンマークのエネルギー計画において原子力利用に係わる調査の開始を、賛成71、反対34、棄権5票で可決した。本決議は、原子力発電の検討を禁止した1985年の議会決定を覆す、デンマークのエネルギー政策における大きな転換となった。
議会は、太陽光と風力による再生可能エネルギーはデンマークのエネルギー供給の基盤であり続けるべきであり、従来の原子力発電がデンマークにおいて適切とは考えていないとする一方で、政府が新たな原子力技術の可能性とリスク、および原子力発電の禁止措置の撤廃に伴う多様な影響を分析する調査の開始を認めることとなった。
デンマークにおける原子力発電の禁止は、原子力をエネルギー計画の一部にしてはならないという1985年の議会決定、ならびに原子力発電設備の送電網への接続を禁止する電気供給法第11条第6項に依拠している。今回の決議は、原子力を国家のエネルギー議論の俎上に戻すもの。但し、電気供給法第11条第6項を廃止しない限り、デンマークでは原子力が現実的な選択肢にはなり得ない。
なお、今回の議決は、デンマークの野党(主に自由同盟、保守党、デンマーク民主党、デンマーク人民党)による、1985年の原子力発電禁止決定の明示的な撤廃を要求する緊急動議による。政府(社会民主党、自由党、穏健党)は代替案を提出。禁止措置を明確に撤廃する代わりに、原子力の調査を開始する内容で、原子力を計画に再導入する余地を残す内容であった。
デンマークのL. アーガード・気候・エネルギー・公益事業相(穏健党)は、デンマークが長年追求してきた風力や太陽光発電によるグリーン電力が、エネルギー計画の柱であることに変わりはないが、「現代の原子力技術は急速に進歩しており、将来的に可能性を秘めている。小型モジュール炉(SMR)を導入する場合、それがデンマーク社会にとって、どのような意味を持つかを明確にする必要がある。廃棄物の処理をどう行うのか、どのような安全対策が必要なのかなど、多くの課題がある」と指摘。そのうえで、政府は新たな原子力技術が将来的に風力や太陽光発電を補完する可能性とリスクの調査をする予定である、と言及した。
国際エネルギー機関(IEA)によれば、風力、太陽光、バイオ燃料などの再生可能エネルギーが同国の電力の80%以上を占めている。