エストニア SMR建設に向けたサイト選定を開始
05 Jun 2025
エストニア政府は5月22日、合計出力60万kWeの原子力発電所およびその運転に必要なインフラ整備のため、定められたサイト選定プロセスと戦略的環境影響評価を開始することを明らかにした。
エストニアの新興エネルギー企業フェルミ・エネルギア社は2025年1月、計画している原子力発電所を建設する最適地を見つけるため、経済通信省に対し、原子力発電所のサイト選定プロセスの開始を申請した。フェルミ社は、エストニアのエネルギー安全保障と気候目標へのコミットメントの一環として、GEベルノバ日立ニュークリアエナジー(GVH)社製のSMRであるBWRX-300の2基から構成される、合計出力60万kWeの原子力発電所の建設を計画。2029年に規制当局に建設許可を申請し、早ければ2035年までに初号機の運転開始を予定している。
サイト選定プロセスの実施にあたり、フェルミ社は5月12日、経済通信省と協力協定を締結。影響評価と調査を含む、すべての費用をフェルミ社が負担し、同省は計画の準備、取り纏めを行うという。
E. ケルド経済通信相は、「サイト選定プロセス=イコール原子力発電所の建設開始、ではない。まずは、原子力発電所を建設する条件や具体的な場所について分析。投資家が原子力発電所の建設への投資を希望し、国が建設を決定した場合に、十分に検討され、評価された計画を持っているように、準備を進めていく」と説明。「建設が実現されれば、地域に新たな高レベルの雇用が創出され、地域経済の発展が見込まれる」と展望を示した。
選定の計画区域の面積は西ヴィル郡と東ヴィル郡の両方で約1,285㎢と、発電所とその関連インフラが建設される区域よりも大幅に広い範囲に及ぶ。そのため、既存の電力網との接続の計画も含め、原子力発電所の最適な立地を徹底的に検討・評価することが可能になる。発電所が計画区域内の住民、その住宅および生活環境や自然環境、経済に及ぼす影響など、関連するあらゆる影響を評価していくという。
サイト選定プロセスには、計画区域の住民、地方自治体、関連当局、およびその他の利害関係者が参加。予備的な選定において、発電所と運営に必要なインフラに最適地を、計画区域全体で調査し、複数の候補地を検討する。フェルミ社ならびに政府の原子力作業部会は、すでに原子力発電所の建設に適した可能性のある地域を分析している。フェルミ社が実施した予備調査では、西ヴィル郡クンダ近郊のヴィル・ニグラと、東ヴィル郡リュガヌセのアー村を候補地に挙げている。
フェルミ社は、過去6年間にわたり、住民を対象とした説明会を16か所の自治体で50回以上実施し、500人以上が参加。これを経て、西ヴィル郡ヴィル・ニグラ、ならびに東ヴィル郡リュガヌセの各自治体議会はサイト選定プロセスへの参加について合意している。
なおフェルミ社は、今年4月に委託・実施した世論調査の結果、エストニア国民の69%がSMR建設準備の継続を支持、または支持する傾向を示しており、この数字は過去5年間を通じて着実に増加していると指摘。また、エストニアにおいて発電電力量の約半分のシェアを占めるオイルシェールによる発電を段階的に廃止するにあたり、どのエネルギー源を優先すべきかを尋ねる設問では、回答者の56%が原子力を挙げているという。