原子力産業新聞

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米国 UF6転換施設の建設を検討へ

10 Sep 2025

桜井久子

UECのワイオミング州のプラントでイエローケーキを初生産(2025年2月) © UEC

米国のウラニウム・エナジー(UEC)社は92日、米国の新しいウラン製錬・転換施設の建設の実現可能性を検討するため、完全子会社である米国ウラン製錬・転換会社(UR&C)の設立を明らかにした

UECは現在、推定資源量、認可済み生産量、加工能力で米国最大のウラン企業。同社のA. アドナニCEOは、「当社がウランの採掘、加工、製錬、転換能力を備えた唯一の垂直統合型の米国企業になることは、米国にとって重要な商業的機会であると同時に戦略的にも必要。当社は、主要事業である既存のウラン採掘・加工に注力しながら、UR&Cを通じて、国内の燃料サプライチェーンを構築して濃縮能力の拡大を支援し、長期的なエネルギー安全保障強化に中心的役割を果たしていく」と抱負を述べた。

垂直統合により、低濃縮ウラン(LEU)や高アッセイ低濃縮ウラン(HALEU)といった国内外で必要とされる原子燃料の生産を可能にする六フッ化ウラン(UF6)を確実に供給していく計画で、トランプ米大統領が発令した一連の大統領令に基づく連邦政策や、国家安全保障上の優先課題である燃料サイクルの国内回帰を図る、防衛生産法(DPA)の権限とも整合するという。

UEC社は、市場環境と連邦政府の支援により、米国企業が新たなウラン製錬・UF6転換プラントを開発し、国内の転換能力を拡大するのに最適なタイミングと捉え、米国内需要(年間18,000 MtU)の約半分をカバーする年間~10,000 MtUUF6を生産する米国最大かつ最新鋭の転換施設の建設を計画している。

同転換施設の建設計画については、米大手EPC(設計・調達・建設)契約企業のフルアー(Fluor)社と20247月に開始された1年にわたる設計・エンジニアリング作業に基づいており、建設サイトを物流、労働力、地域住民の受容性、地元のインセンティブ、他の燃料サイクル施設との相乗効果などの面から評価しているところ。また、プロジェクトは、追加の工学・経済調査の完了、政府の戦略的コミットメント、電力会社との契約、規制承認、有利な市場条件など、複数の要因に応じて進行し、UECは既に政府、州エネルギー当局、電力会社、金融機関と初期協議を開始しているという。

UECのS. エイブラハム会長(元米エネルギー省長官)は、「長年にわたり、米国は国家的・経済的安全保障に不可欠な重要資源の供給と加工を外国に依存してきた。当社は、天然UF6の垂直統合型サプライチェーンを確立し、世界最大規模となる原子力発電フリート向けの濃縮用原材料を確保して米国の濃縮産業の成長を促進し、米国内の原子力発電設備容量を現状の4倍、4kWeとするトランプ大統領のプログラムの重要な一翼を担っていく」と語った。

UEC社によると、現在のUF6転換価格は過去最高水準に近く、スポット市場では6466ドル/kgU、長期市場では約52ドル/kgUとなっており、米国の燃料サプライチェーンにおいては深刻なボトルネックとなっているという。

なお現在、米国で稼働するウラン転換施設は、イリノイ州南部にあるコンバーダイン社のメトロポリス・ワークス(MTW)プラントのみ。同プラントは2017年~2023年にかけて、市場環境の悪化により一時的に操業を停止していたが、20237月に再開されている。

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